イオンが電子より高温の謎 スーパーコンピュータで解明 東北大ら

2020年12月19日 16:55

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シミュレーション結果。プラズマ乱流の縦波的ゆらぎがイオンをより加熱(画像:東北大学の発表資料より)

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 太陽から吹きつける太陽風や、ブラックホールを囲む降着円盤を作る「プラズマ」。プラズマを構成するイオンが電子よりもはるかに高温であることは長年の謎だったが、東北大学らの研究グループは15日、国立天文台のスーパーコンピュータ「アルテイII」などを活用し、この謎を解明したと発表した。

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■「目に見える」物質の99%を占めるプラズマ

 宇宙に存在する物質のうち、目に見える物質「バリオン」は2割にすぎない。このバリオンの99%はプラズマ状態にあると考えられている。そのためプラズマの性質を知ることは、天体現象の理解に不可欠だという。

 プラズマが大きく寄与する天体現象として、太陽風や降着円盤が挙げられる。太陽風の観測や降着円盤の理論モデルから、イオンが電子よりもはるかに高温だと判明している。イオンと電子とのあいだに衝突が起きないために、両者は異なる温度を取ることができるためだ。こうした現象の謎を解くためには、無衝突状態にあるプラズマの基礎性質の理解が不可欠だという。

 東北大学、英国・オックスフォード大学、米国・プリンストン大学、カリフォルニア大学バークレー校、アリゾナ大学、メリーランド大学などの研究者らから構成される国際グループは、イオンと電子とが無衝突状態にあるプラズマの乱流についてシミュレーションを実施し、イオンと電子が加熱する様子を調査した。

■M87銀河の巨大ブラックホールの解析にも貢献

 プラズマの乱流は、磁力線が弦のように振動する「横波的ゆらぎ」と密度や磁場の強度が振動する「縦波的ゆらぎ」に大別される。従来のモデルでは、横波的ゆらぎだけが存在する状況が想定されてきたが、研究グループは新モデルにより、縦波的ゆらぎと横波的ゆらぎが共存状態にある乱流についてシミュレーションを行った。

 その結果、イオンが電子より強く加熱することが判明。イオンが縦波的ゆらぎのもつエネルギーを電子よりも効率的に吸い取るために、イオンと電子とのあいだで温度差が生じたのだという。

 2019年には「イベント・ホライズン・テレスコープ」が、M87銀河にあるブラックホールの影の撮像に成功している。今回の成果は、この撮像結果を解析するのに役立つだろうと、研究グループは期待している。またこの発見によって、さまざまな天体現象でイオンが電子より高温である事実も説明できる。

 研究の詳細は、米物理学誌Physical Review Xに11日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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