相場展望12月3日号 イエレン氏米財務長官指名で株価上昇 <一考察>

2020年12月3日 08:36

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■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)11/30、NYダウ▲271ドル安、29,638ドル
  ・先週に初めて3万ドルを超え、短期的な過熱感から幅広く利益確定売りが出た。
  ・11月の月間としては+11.8%の上昇。

【前回は】相場展望11月30日号 米失業保険期限切れで、景気後退の『危機』迫る 日本株は楽観続くが、外資系短期筋の変調に警戒

 2)12/01、NYダウ+185ドル高、29,823ドル
  ・新型コロナワクチンの12月接種との期待から景気敏感株に買いが入った。
  ・アジアや欧州の主要株式指数の上昇もあり、買い安心感が広がった。
  ・一時+400ドル超上昇したが、追加経済対策で成立困難との見方が出て、上げ幅縮小。

 3)12/02、NYダウ+59ドル高、29,883ドル
  ・11月非農業部門の雇用者数が低調で、追加経済対策での与野党協議の早期合意困難を受けて利益確定売りが先行し一時▲200ドル超下落した。
  ・ワクチン接種普及と経済対策協議の進展期待で買い戻された。

●2.2021年正月、米国を最大の危機が襲う(JB pressより抜粋

 1)米スタウト社資料によると、年明け早々に住居を退去されかねない最大647万世帯ある。家族を考慮すると1,000万人を超える。強制退去の多くは低所得者層であるため、さらに支払いが難しくなる。

 2)米国勢調査局が11月初旬にまとめた報告書によると、約1,160万人が来月の家賃・住宅ローンの支払いができない状況である。

●3.次期財務長官に指名されたイエレン前FRB(米連邦準備制度理事会)議長について〈一考察〉

 1)金融業界はイエレン氏なら規制強化しないとして歓迎し、先週の財務長官指名報道を好材料と受け止め株価は大幅上昇した。

 2)金融業界の規制強化に熱心な民主党左派のウォーレン上院議員は財務長官のポストを望んでいたが、労働経済学を学び、FRB議長時代も労働者に軸足を置いて政策決定をしてきたイエレン氏の指名報道に賛同を表した。

 3)米金融業界の規制強化を主張する民主党左派が認めるイエレン氏が、果たして株式市場期待通りの金融政策をとるか?

 4)イエレン氏の考えについて過去の言動を振り返る。
  ・イエレン氏の基本的な考え方は、『健全な財政』であり、その実現のための実施内容は『増税と歳出削減』である。その根底にあるのは、「政府債務の伸び率が、経済成長率を上回ると、いずれは金利上昇につながり、企業の投資が減少し、生活水準の伸びの低下につながる」という見方を持っている。さらに、「米国の財政赤字を削減しなければ、米国は深刻な経済的コストとリスクにさらされる」とも警鐘している。ただし、今回のようなコロナ禍による非常時には、政府の歳出増加は容認している。

  ・また、イエレン氏は、「経済成果の恩恵は、ごく一部の人しか享受していない」として失業保険制度、介護含む福祉制度の充実の必要性を述べている。さらに、所得の不公平に気をかけ、最低賃金が低水準とも指摘している。

  ・教育の機会均等を幅広く図るため教育に対する歳出増加、の必要性も語っている。その流れで、学生ローンの負担の大きさと、その救済にも言及している。

 5)民主党左派指導者の主張
  ・サンダース上院議員は、「労働者生活向上のため最低賃金を時給15ドルへ引上げ」
  ・ウォーレン上院議員は、「利益獲得に獰猛で、巨額な報酬を獲得している金融業界の規制強化」を主張している。

 6)イエレン氏は、労働者を基盤にした民主党の党員である。
  ・また上記のように、民主党左派の主張に親和性があることが窺える。

 7)イエレン氏は中国政府に対して、為替操縦・中国企業への補助金・知的財産盗用に関し批判している。

 8)イエレン氏の今後を予想
  ・財務長官として、バイデン次期大統領と議会に対して、『緊縮財政の時期尚早な復活を促す』懸念があり得る。FRB議長在任中も、今までの超金融緩和策を転換して、金利引上げと資金回収を図った実績がある。
  ・共和党トランプ氏が進展させた金融規制緩和を見直し、規制強化もあり得る。
  ・財務長官として、他国との金融交渉においてマクロ経済的視点を持ち出す可能性がある。(参考:フィスコ、バロン等)

 9)来年の新大統領就任式1/20以降の株価反応に注目したい。

●4.米財務省官とFRB議長が12/1、上院銀行委員会で証言「中小企業に危機感」(ロイターより抜粋

 1)財務長官 :「中小企業に2~3カ月も待つ余裕はないと、助成金3,000億ドル(約31兆円)を確保する」ことを提案した。
   FRB議長:「危険にさらされている中小企業が沢山ある」と述べ、対応を促した。

●5.米連邦取引委員会(FTC)等が、独禁法違反でGAFA提訴の準備(産経新聞より抜粋

 1)フェイスブックは、FTC以外にニューヨーク州司法当局も12月上旬に提訴の可能性も。
 2)グーグルは、テキサス州・コロラド州も提訴の方向で準備。
 3)アマゾンは、FTCが自社通販サイトの取引慣行を調査。
 4)アップルは、司法省がアプリ配信市場について調査。

●6.米ISM製造業総合景況指数、11月は57.5と高水準ながら予想58を下回る(ブルームバーグ)

 1)米供給管理協会(ISM)製造業総合指数の前月10月の59.3からも低下。

●7.米議会報告で、「中国は、新技術独占を通じた世界覇権に野心をむき出しつつある」とし、『自由な国際秩序を失う』と懸念を公表した。(時事)

●8.米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は年次報告書を12/1公表(読売新聞より抜粋

 1)新型コロナ感染拡大
  ・「中国共産党による不手際と隠蔽が、世界的大流行を招き、世界経済に大きな打撃を与えた」とし、中国の責任を激しく指摘した。
  ・「中国で新たな病気の流行が起きるリスクは引き続き高い」と警鐘を鳴らした。
  ・「世界が新型コロナに集中する間に、近隣諸国への軍事的脅威を強めた」と批難した。
  ・「コロナ医療支援を通じ、地位を高めようと試みた」と否定的な見方を示した。

 2)中国の軍事力拡大
  ・「中国軍が今世紀半ばまでに、世界のどこにでも迅速に展開できるよう目指している」と指摘した。
  ・「中国企業が世界各地で所有・運営している港は今年2月時点で94カ所にのぼるとし、中国軍の海外展開の祭、これらの港を拠点とする」可能性に言及した。

●9.バイデン次期大統領は12/2、対中国制裁関税を直ちに破棄せず(NYタイムズ)

 1)バイデン氏は、インタビューで、トランプ政権が中国の対米輸出品の約半数に課した25%の制裁関税を直ちに廃止するともりはない、と述べた。

●10.企業動向

 1)米エクソン、価格下落により天然ガス資産で最大200億ドルの減損計上へ(ロイター)
 2)米セールスフォース、スラックを2.9兆円で買収と発表(AFP、時事)

●11.世界経済

 1)経済協力開発機構(OECD)は来年の世界成長率を+5.0%⇒+4.2%に下方修正(時事)
  ・ワクチン接種の世界的な普及を2021年末とする前提で算出した。

■II.中国株式市場

 ●1.上海総合指数の推移
  1)11/30、上海総合指数▲16安、3,391
   ・連日急ピッチで上昇した銀行株が利益確定売りで下落し、重石になった。(Investing)

  2)12/01、上海総合指数+60高、3,451
   ・11月財新中国製造業購買担当者指数(PMI)が前月より改善し、中国景気回復観測が改めて強まった。(日本経済新聞)

  3)12/02、上海総合指数▲2安、3,449
   ・バイデン次期米大統領が対中国関税を直ちに廃止するつもりはないと報じられたが、下値は限定的だった。(亜州リサーチ)

●2.米政権は中国最大の半導体メーカーのSMICを防衛ブラックリストに追加予定(ロイター)

 1)SMICは世界半導体ファンドリ市場の約4%を占める。

●3.中国が輸出管理法を12/1に施行(産経新聞より抜粋

 1)中国が、国家安全に関わる戦略物資や技術の輸出を規制する「輸出管理法」を12/1に施行した。
 2)中国の安全保障に害を及ぼすとみなした企業をリスト化して禁輸措置をとることが可能となり、米国に対抗する狙いがある。
 3)ただ、管理品目を公表していない等、運用を巡る不透明さに海外で懸念が強まっている。
 4)管理品目には、中国が世界生産シェアの6割強を占めるレアアースが入るとの見方があり日本企業も警戒している。

●4.米国務省は12/1、中国が北朝鮮制裁違反した情報提供に500万ドルの報酬金(ロイターより抜粋

 1)国連が発動した北朝鮮への制裁措置を、中国が骨抜きにしていると批判した。
 2)中国は制裁対象の北朝鮮労働者を2万人超受入れと、石炭輸送を過去1年間で555回確認したとした。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/30、日経平均▲211円安、26,433円
  ・4日間連続上昇して、短期的な過熱感の強まりを警戒し、機関投資家が利益確定売りを出した。

 2)12/01、日経平均+353円高、26,787円
  ・ワクチンの早期使用への期待に、昨日の反動や押し目買いも入り、景気敏感株を中心に買い優勢となった。

 3)12/02、日経平均+13円高、26,800円
  ・高値警戒感もあり利益確定売りが出たが、ワクチン期待が支えた。
  ・新型コロナ感染状況の悪化も重石になった。

●2.財務省・法人企業統計7~9月の企業の経常利益は昨年を▲28.4%下回る(NHK)

 1)4~6月期の▲46.6%と比べると減少幅は縮小したものの、新型コロナの影響で依然として大幅な落ち込みとなった。

●3.企業動向

 1)東芝 電力効率高いパワー半導体の生産1.5倍増強に1,000億円投資(共同)

●4.企業業績

 1)くら寿司 2020年10月決算は純損失▲2億円、国内売上好調も米国事業不振で。

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)

 ・5803 フジクラ    米国の通信網整備に期待。
 ・4547 キッセイ薬品  業績に期待。
 ・5713 住友金属鉱山  銅国際価格上昇と中国回復期待。
 ・6289 技研製     補正予算期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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