アント上場延期の影響はアリババを経由して、ソフトバンクGに及ぶ? (上)

2020年11月17日 08:04

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 中国の電子取引最大手である里巴巴(アリババ)集団系列で、金融会社の枠に留まらないフィンテック企業として積極的な活動を続けてきたアント・グループは、11月5日に新規上場して約340億ドル(約3兆6000億円)を市場から調達しようしていたが、直前の3日に、上場の延期が発表された。新規株式公開(IPO)ではまれな事態が発生したことで、世界に波紋を広げている。

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 中国では以前から既存の銀行業界と、ITと金融を融合させたアントなどのフィンテック企業との間で水面下の対立が続いていた。

 1代で巨大な企業グループを築き上げたカリスマの馬雲(ジャック・マー)氏を、制御できる側近はいなかった。10月24日に上海で開催され、銀行界のお歴々や金融監督当局、政府の要人が出席する会合で、馬雲氏がどんな内容を話すかを事前に知った側近は、(多分馬雲氏の怒りを買わない程度に恐る恐る)「穏やかな内容にすべき」と提案したようだが、馬雲氏を翻意させることはできなかった。

 馬雲氏は「国内に於ける金融規制が技術革新を遅らせるネックだ。経済の成長を求めるなら改革が必要だ。中国の銀行は担保にこだわり、まるで質屋のようだ」と持論を捲し立てた。

 批判されて怒り心頭に発した勢力は、わずか1週間で反撃の体制を整える。10月末に開催した金融安定をテーマにした会議で、国務院(政府)はアントを含むフィンテック企業なども、「全面的に監督に組み込む」ことを表明した。

 銀行や保険を守備範囲とする監督当局の幹部は、アントのサービスと銀行の金融サービスに、本質的な相違はないと苛立ちを明確にした上で、アントの手数料が高額で利用者の負担が重いと指摘していた。アントの事業は庶民に過大な負担を与える、儲け主義だと断罪したのに等しい。

 11月2日に馬雲氏や、アントの首脳陣が金融当局の聴取を受けたのは、手続き上のダメ押しだろう。上海証券取引所が、馬雲氏やアントの首脳陣が聴取を受けたために、追加の情報開示が必要だと指摘したおまけもついているが、聴取とは裏腹な「怖い思い」をした馬雲氏等に、アントの上場を翻意する以外の選択肢はなかったはずだ。

 アントの処遇がアリババに及ぶことは自明のことで、アリババが受ける影響と無縁でいられないのがソフトバンクグループ(SBG)であることは、常識のレベルだろう。

 果たしてSBGはどんな余波を受けるのだろうか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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