「ドコモ口座」から始まった不正利用が拡大、「多すぎる銀行」に吹きすさぶ逆風 (上)

2020年9月18日 20:05

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 日本に銀行の数は多い。商号に銀行を名乗らなくても、銀行と同様の業務を行う信用金庫などの金融機関も実質的には「銀行」である。数ある銀行は、日本銀行法を設立根拠にしている日本銀行を除けば全て、自社の経営の巧拙が損益にストレートに反映される宿命を持っている。

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 メガバンクも地方銀行も信金や信組、農協、漁協なども、預貸金の利ザヤと手数料を主な収入源とする点では同じような経営をしている。業容(規模)には非常に大きな格差のある「銀行」だが、監督官庁の許認可に係わる事項を除けば、経営の方針や管理体制の構築は全て個々の法人に任されている。

 「銀行」だからと言って、法人と個人にバランス良く経営資源を分散する縛りがある訳でもない。利益を極大化するために個人ローンに特化して、最終的には全行的な書類の偽造問題を引き起こしてしまった「スルガ銀行」も、事態が発覚する前の好調期には時の金融庁長官が「地銀のモデル」と持て囃すくらいの、飛び抜けた高収益を計上して存在感を誇示していた。

 「ドコモ口座」を巡る預金の不正な引出し問題には、銀行間のシステムの違いが浮き彫りになっている。NTTドコモが「ドコモ口座」で連携している銀行は35行だが、全ての銀行で不正な引出しが行われている訳ではない。18日の午前零時時点で、把握されている被害は11行の162件、2764万円だ。

 報道されているところによると、預金者が自分の口座の動きに不審を抱いて銀行に確認しなければ発覚しないようなので、何らかの事情で自分の口座の動きに触れる機会の無い人に被害が潜在している可能性は否定できない。それを勘案しても、現在「ドコモ口座」連携銀行の3分の1程度に限定されている被害の割合は、大きく変わらないだろう。

 例えば懸念の無いセキュリティシステムを構築するのに、1億円の経費が掛かるとする。この経費に負担を感じないメガバンクと、「もっと安くできないのか」と感じる銀行があるのは厳粛な事実だ。この格差はどんなところにも顔を出すが、今回は「ドコモ口座」で銀行の「違い」が表面化した。

 連携する銀行によってNTTドコモが「ドコモ口座」のシステムに差を付けていることが考えられないので、今回の不正引出し問題の「穴」が銀行にあるのは自明のことだろう。この問題は菅新首相の持論である「銀行が多すぎる」ことと、奇妙にリンクしてしかもタイムリーだ。関係者が「ただでは済まない」と感じるのは、至極真っ当だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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