FRBの政策目標変更とゼロ金利政策の弊害 前編

2020年8月30日 17:43

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 米連邦準備理事会(FRB)は6月上旬に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の中で、新型コロナウイルス禍を起因とした「景気の先行きには極めて大きなリスクがある」と認め、金融緩和の追加策を検討していたが、8月27日のFOMCで早速、新しい追加策が発表された。

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 追加策は具体的な政策ではなく、政策目標の変更である。FRBはこれまで「物価上昇率2%を達成する」という目標を公表することで、その達成前に利上げするという出口戦略を行ってきた。今回、その政策目標が「一定期間の平均で2%」と変更されたため、たとえ物価上昇率が2%を超えたとしても金融緩和が継続していくことを示唆することになった。つまり、現在FRBが行っているゼロ金利政策が、長期化することを意味する。

 そもそもゼロ金利政策とは、中央銀行が大量の資金を供給することで市場金利を0%近くに誘導する金融政策である。この政策により民間の金融機関がほぼ0%の金利で資金調達できるため、企業や個人へ融資する際の金利も低く設定できる。現金が市場に多く流通すれば、企業は設備投資へ積極的になり、個人も住宅購入などの購買意欲が増すなど、景気刺激に至らせることが目論見である。

 しかし、このような金融緩和を継続しすぎると、現金が市場に溢れると同時に過度なインフレ(物価上昇)も引き起こしてしまう。行きつく先はバブルだ。そのため、各中央銀行は物価上昇率を政策目標としながら、金融緩和(利下げ)と金融引き締め(利上げ)を交互に繰り替えして調整してきたが、それも限界に近い。

 というのも、金融緩和(利下げ)は政策金利を下げる余地があるからこそであり、ゼロ金利政策に至ってしまえば、それ以上利下げの余地がなくなるのは当然だ。つまり、ゼロ金利政策以降の利下げは、現在日本銀行やユーロ圏が行っているようなマイナス金利政策しかない。

 ただし、マイナス金利政策は様々な弊害を生む。現在日本が行っているマイナス金利政策は、民間の金融機関が日銀に持つ当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を課すというものであり、民間の金融機関の収益を圧迫しているのだ。

 マイナス金利の結果、経営が苦しくなった金融機関が収益改善のために口座の開設手数料や維持手数料(実質利用者へのマイナス金利波及)で利用者に負担を促すようになれば、景気刺激を目的としている利下げが本末転倒となってしまう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

続きは: FRBの政策目標変更とゼロ金利政策の弊害 後編

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