ドル全面安に拍車、FRBは23年までゼロ金利維持を強調

2020年8月21日 13:38

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 20日の日経新聞(電子版)は、『7月28・29日のFOMCで論じられたフォワード・ガイダンスに、まずゼロ金利政策の長期継続を具体策として挙げている』と報じている。この会合では多くの出席者が『今後の政策金利の先行きを明確にしておくべき』と発言し、9月中旬に開かれる次回FOMCで正式案とする公算が高い。

 ゼロ金利政策の長期化については、コロナ禍が深刻化した時点でおおよそ分かっていたことだが、FRBがその方針を明らかにした今、米ドル相場が長期に下降トレンドを形成する可能性が強まったことになる。

 今回のFRBによるフォワード・ガイダンスでは、これまで通りの金融緩和政策とゼロ金利の長期継続が最優先事項として掲げられる予定だ。まず物価指数2%上昇とのインフレターゲットを政策目標とし、達成後もしばらく2%上昇が安定するまで継続する考えだ。なお、この目標値をクリアするのは早くとも23年以降になるとも言及している。

 FRBの判断を促したのは、7月30日に発表された米国の2020年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率だ。前期比年率換算でマイナス32.9%を記録しており、戦後最大の下落幅となった。とくに輸出は64%減と酷い。また個人消費の低迷による国内需要が減少も大きく、失業率は高いままである。さらに設備投資も3期連続で大きく額を落とした。確かに、一部のIT産業の好景気でナスダックが青天助を駆け昇ってはいるが、マーケットの評価ほど米経済の実態は芳しくないのだ。

 ちなみに日本のGDPは年率換算で27.8%減だったが、コロナショック前の消費税増税の影響もあり、3四半期連続のマイナスだ。ユーロが好調なEU圏は40.3%減と、米経済よりも悪い。コロナ禍では日本やEU圏のダメージも相当に大きいが、ドル全面安のトレンドは今年5月から今なお継続中である。

 その要因としては、まず米国債10年物利回り(実質金利)が2020年3月にはじめて1%を下回り、一次的にマイナス圏に突入する場面を見せたことだ。このあと強い『ドル売り・ユーロ買い』がはじまり、現在も0.6%台と不振が続く。また領事館の閉鎖にまで至る米中対立の激化もある。そこにFRBの度重なる景気不安の声明に、今回のゼロ金利政策継続の発言がさらなる米ドル売りを加速させる要因になりかねない。

 そのような世界経済にあって、日本円もまた弱い。米ドルの弱さでやや目立ち難いが、かつてのようにリスク回避の投資先とはなっていないのだ。もちろん、EU圏も中国も決して良い状態ではなく、どこも大規模な量的緩和・低金利の政策が長期化していることで、通貨自体のポテンシャルが下落傾向にあることは否めない。つまり、マイナスポイントの程度で米ドルが最も低い評価を受けているということだ。

 リーマンショック後、ようやくゼロ金利から脱出した米経済ではあるが、コロナ禍に端を発した原油の下落と米GDPの激しい減少、拡大する倒産率・失業率とコロナ禍によるダメージは量り知れず大きい。FRBがなりふり構わず金融政策で下支えをしなければならない程に先行きは暗い。

 そこで個人のFXトレーダーが抑えておくべき点だが、今後2年間、いや米経済が2%のインフレターゲットを達成するまでは、『米ドルの売り』をベースにポートフォリオを作成すべきかもしれない。いくら円が弱いといえ、米ドル/円のポジションはドル売りに比重を置く方が利益率アップとなるのではないだろうか。(記事:TO・記事一覧を見る

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