リチウム空気電池のサイクル寿命低下、根本原因を特定 NIMSとJST

2020年8月13日 16:48

印刷

 リチウム空気電池は、重量当たりのエネルギー密度が圧倒的に大きいことから、軽量性が重視されるドローンなどへの応用が期待されている。だが使用するにつれて充電電圧(過電圧)が上昇して副反応が誘発され、サイクル寿命が実用レベルでないという課題があった。物質・材料研究機構(NIMS)は12日、科学技術振興機構(JST)とソフトバンクとの共同研究により、その原因を特定することに成功したと発表した。

【こちらも】容量は従来の15倍 リチウム空気電池を開発

 リチウム空気電池は、過電圧が上昇すると充電以外の反応に起因する副反応が発生し、劣化が進行する。そのため、過電圧をいかに抑制するかが実用化に向けた鍵とされてきたが、そもそも、なぜ過電圧が上昇するかという根本的なメカニズムの部分は明らかにされてこなかった。

 共同研究グループは、リチウム空気電池の過電圧が、電池の材料や測定条件によって変化する点に着目した。系統的な調査の結果、放電時に生成する過酸化リチウムの「結晶性」が過電圧と明確な相関があることが判明。結晶性の低い過酸化リチウムが多く生成した場合、過電圧が低くなる傾向が実験にて確認された。

 今回の研究では具体例として、正極に用いるカーボン材料の処理条件を変えることによって生成する、過酸化リチウムの結晶性を変化させている。酸化処理を施したカーボン材料を正極に用いることによって、結晶性の低い過酸化リチウムを生成させることができる。

 また、放電電流密度や電解液中の水分量など他の条件を変えた場合でも、結晶性と過電圧の関係は同様であることが観察されている。そのため、低結晶性の過酸化リチウムが低い過電圧につながることは、普遍的な傾向であると考えられる。

 今回の研究成果は、リチウム空気電池の今後の開発において重要な指針となることが期待される。実用的なサイクル寿命を有するリチウム空気電池の開発によって、ドローンやIoT機器などさらに幅広い分野に2次電池を応用することができる。

 本研究の成果は11日付の「Science Advances」誌のオンライン版に掲載されている。

関連キーワード

関連記事