発電所からの廃熱を蓄えるセラミックスでエネルギーを有効利用 東大らの研究

2020年7月3日 16:53

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発電所におけるスカンジウム置換型ラムダ五酸化三チタンの実用例(画像: 東京大学の発表資料より)

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 火力発電所や原子力発電所では、発生したエネルギーの70%ほどが廃熱として無駄になっているのが現状である。このような廃熱を再利用するために、蓄熱セラミックスに熱を蓄えて再利用する可能性が模索されている。東京大学らの共同研究グループは2日、熱水の熱エネルギーを永続的に蓄えることができる、長期蓄熱セラミックスを発見したと発表した。

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 研究グループは、ラムダ五酸化三チタンのチタン(ラムダ相)の一部を、スカンジウムに置換した物質を新しく合成した。この物質は常温常圧下では安定であるが、圧力をかけると瞬時にベータ五酸化三チタン(ベータ相)へと結晶構造が変化する。結晶構造が変化した後の物質は、67度付近に吸熱ピークを有することが発見された。つまり、100度以下の熱を吸収して蓄熱するセラミックスであることが示されたのである。

 熱を吸熱したセラミックスはベータ相からラムダ相へと変化し、その後は再び温度を下げてもラムダ相のまま維持される。そして、再び圧力をかけることでラムダ相からベータ相へと変化して熱を放出する。

 この蓄熱セラミックスを応用することで、蓄熱システムの効率化が可能になる。一般に発電所では、タービンの冷却に川や海の水が使われているが、冷却後は熱水として河川に放出されている。熱水を、上記の蓄熱セラミックスを入れたタンクに入れることで、熱をセラミックス中に蓄積させることが可能となる。

 蓄熱されたセラミックスからは圧力をかけることで熱が放出されるため、熱が必要な場所まで輸送することでエネルギーの再利用が可能となる。例えば、火力発電所でセラミックスに蓄熱を行い、トラックで工場やビルまで運んで熱エネルギーを有効活用することができる。

 今回の研究成果によって、これまで課題であった発電所の発電効率の低さを、実質的に向上させることが期待される。さらに、発電所で発生した熱水がセラミックスによって冷却されるため、環境負荷を抑制することも可能になる。

 本研究の成果は2日付の「Science Advances」誌のオンライン版に掲載されている。

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