月はなぜ非対称性なのか? 東工大らが謎を説明する新説発表

2020年6月30日 07:51

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月の海に密集するKREEP物質 (c) Laneuville, M. et al (2013) Journal of Geophysical Research: Planets.

月の海に密集するKREEP物質 (c) Laneuville, M. et al (2013) Journal of Geophysical Research: Planets.[写真拡大]

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 月が地球に向いている表側には「月の海」と呼ばれる暗い領域があるのに対し、地上から直接確認できない月の裏側には月の海がほとんどなく、クレーターが表面を覆っている。こうした月の非対称性の原因は謎だった。東京工業大学らの研究グループは、非対称性の原因が月を構成する成分が偏在しているためだとする新説を発表している。

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■表裏が異なる月

 月が地球に対し同じ面を向いているのは、月の自転周期と公転周期がほぼ同じであるためだ。地球に向いている表側が地上から確認できるのに対し、月の裏側は、1960年代後半から1970年代前半に実施された米航空宇宙局(NASA)によるアポロ計画によって、確認可能になった。これにより、月の表面が表と裏とで違うことが判明した。

 地球の唯一の衛星である月は、地球の原型となる星に火星程の大きさの天体が衝突することで誕生したと考えられている。地球が広大な海をもち、地殻内部のマントルの対流によりプレートが移動しているのに対し、月は比較的温度の低いためこうしたプレート運動はほとんど起こっていないと考えられている。月はかつて火山活動があったと考えられているが、溶岩が冷却されることで誕生したのが月の海だ。このような月の海が表側にしかないことは、研究者にとって謎だった。

■放射性元素の偏在が月の表裏を作った

 東京工業大学、米フロリダ大学、カーネギー研究所、タウソン大学、NASAジョンストン宇宙センター、ニューメキシコ大学の研究者から構成されるグループが、この謎を解き明かすために注目したのは、「KREEP(クリープ)」と呼ばれる物質だ。月が冷却された際に誕生したと考えられるKREEPは、月の表側にある月の海に含まれ、ポタシウムやトリウム、ウラン等の放射性元素の大部分が密集している。

 研究グループは、KREEPを含む岩を再現した実験やコンピューターシミュレーション、月の観測等を駆使して、月の非対称性を説明しようとした。トリウムなどの不安定な元素は放射性元素によって熱を放射する。この熱が放射性元素を含む岩を溶かし、KREEPが月に偏在することを部分的に説明するのだという。

 KREEPの割合を変えた岩を複数用意し実験した結果、月が誕生した初期に月の成分の偏在性がすでに存在していたことが判明した。

 研究グループによると、月だけでなく太陽系の他の衛星でも同様の非対称性の証拠が発見できることが期待されるとしている。

 研究の詳細は、Nature Geoscienceに3月30日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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