霊長類が放つフェロモン物質を初めて特定 異性を惹きつける匂い 東大など

2020年4月20日 12:31

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ワオキツネザルが放つ匂い物質を特定(写真:東京大学の発表資料より)

ワオキツネザルが放つ匂い物質を特定(写真:東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 分泌することで異性を誘因するフェロモン。異性間の原初的なコミュニケーションであるフェロモンの分泌。東京大学は17日、霊長類動物のキツネからフェロモンとなる物質を特定したと発表した。霊長類でこのような異性を惹きつける効果があるフェロモンの匂い物質が特定されたのは初めてという。

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■コミュニケーションの役割を果たすフェロモン

 配偶者の選択など子孫を残すために、多くの動物は体臭を介してコミュニケーションを行っている。自らの体臭は他の個体に自身の存在を知らせ、他の個体の体臭は相手の情報を取得できるなど、シグナルとして機能している。

 だが霊長類動物は視覚の発達により嗅覚が鈍化したため、役割は大きくないと考えられてきた。ヒトにおいても体臭を介したコミュニケーションが存在する可能性があるが、どのような匂いがコミュニケーションにつながるのかは明らかでない。

■匂いのついた尾を振ることでコミュニケーションを実施

 東京大学、京都大学、北海道大学、進化生物学研究所などの研究者から構成されるグループが注目したのが、マダガスカル島に住むワオキツネザルだ。霊長類動物のなかでも嗅覚によるコミュニケーションを示すことから、繁殖の成功に匂いが強く関与しているのだと考え、検証を試みた。

 オスの前腕腺にマーキングし、メスが嗅ぐ行動を観察したところ、この行動がほぼ繁殖期にみられることが確認された。約4年間にわたってオスの前立腺から分泌される液を集め、成分の分析やメスの行動との関連の調査を実施。その結果、フローラル・フルーティーのような香りをするアルデヒド化合物が増加していることが判明した。

 研究グループによると、ワオキツネザルのオスは繁殖期にこの化合物が生む匂いを尾につけ、大きく振ることで周囲に匂いを伝え、メスを引き寄せているのだという。

 研究の詳細は、米生物学誌Current Biologyにて16日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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