シデムシは子供が餌をねだるタイミングを操るフェロモンを持つ 京大などの研究

2019年9月13日 11:25

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研究の概要図。(画像:京都大学発表資料より)

研究の概要図。(画像:京都大学発表資料より)[写真拡大]

 子育てをする昆虫がいる、ということを知っていただろうか。そんなに多くはないのだが、その一種にシデムシという、子に餌を運ぶ虫がいる。鳥の子育てなどと同じように、シデムシ幼虫は親に餌をねだるのだが、その「おねだり」のタイミングは親シデムシが放出するフェロモンによって引き起こされる、ということを今回の研究は明らかにした。

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 研究に参加しているのは、京都大学大学院農学研究科の高田守日本学術振興会特別研究員、京都工芸繊維大学生物資源フィールド科学研究部門の三高雄希同特別研究員、バイロイト大学進化動物生態学研究科Sandra Steiger教授、京都大学大学院農学研究科森直樹教授らの研究グループ。

 シデムシはコウチュウ目ハネカクシ上科シデムシ科に属する甲虫の総称である。死体に群がり、死体を餌とするということで、「死出虫」というぞっとしない名がついている。

 特に、モンシデムシと呼ばれる種類のシデムシは亜社会性の昆虫であり、雌雄のつがいで小型の脊椎動物の死骸を肉団子に加工して地中に保存し、これを自分で食べて半消化状態にした液体を幼虫に与える。甲虫では他に類のない習性と言え、かの昆虫学者ファーブルも多くの観察・実験の対象としている。

 モンシデムシの幼虫は、実際に観察すると、親シデムシの給餌が起こる直前に一斉に餌を求める態度を示す。このとき、親シデムシは何らかの合図をしていると考えられる。研究の結果として、それは2-フェノキシエタノールという揮発性の物質であることが明らかになった。

 このような機能を持つフェロモンは過去には発見されておらず、研究グループはこれを「給餌フェロモン」と命名した。こうして、シデムシの親子間コミュニケーションについての新たな知見がもたらされたわけである。

 なお研究の詳細は、iScienceに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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