葬儀費用低下傾向の時代、老舗葬儀社は生き残れるのか

2020年3月10日 12:25

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 厚生労働省の推計によると、2019年の死亡者数は約137万人。死亡者数は年率1~2%程度増加し、40年度には167万9000人水準まで膨れる見通しだという。

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 また矢野経済研究所は、国内の葬祭ビジネス市場について「18年は前年比1.0%増、だが22年には0.8%増と低下傾向になろう。家族葬や直葬に象徴される低コスト葬のニーズの高まりが背景にある。40年に向かってもこのトレンドに変化はない」とレポートした。

 そんな報に接したとき、意地悪な虫が頭の中で暴れ始めた。「家族葬」の3文字に象徴されるように、簡素な葬儀を選択する流れが指摘されている。葬儀業界の大手・老舗の収益動向に影響が出ているのではないか、という「虫の呟き」である。

 業界の老舗としては、燦(さん)ホールディングスが知られる。傘下に母体となった公益社(首都圏・近畿圏)の他、買収した葬仙(山陰エリア)/タルイ(兵庫県南部エリア)を有している。葬儀会館数は前3月期末で計70会館。

 まずは収益動向を調べてみた。19年3月期は「営業収益3.5%増収、10.6%営業増益」。対して今期計画は「2.6%の増収(213億円)、4.4%の営業減益(28億1000万円)」。開示済みの4-9月期実績の計画に対する進捗率は「49%、53%」。前年同期に比べると「3.5%増、2.0%増」。計画に沿ったまずまずの展開。

 意地悪の虫が「何故なんだ」と不平を漏らした。燦HDに通じたアナリストに「虫」の意を伝えた。

 まずは「燦も葬儀に関する新たな流れは、重々承知している。燦グループの各会場でも参列者が2-30名というケースが増えている。合わせて既存の開館のリニューアルに着手している。また20年までには80会館体制を公にしているが、新しい会館は葬儀の小型化に備え駅近150-200坪程度の平屋を中心とする計画だ」とし、こう続けた。「葬儀の在り様は変わっても、葬儀を執り行う上で必要な体制が整備されているのが燦HDの強みだと認識している」。

★事前相談: 厚労省認定の「葬祭ディレクター技能審査」の1級合格者(240名:業界最多)が行う。

★エンバーミング: 遺体の防腐・殺菌・修復を行う専門技術。米国では死亡者の9割近くに施される。施行者:エンバーマーが24名在籍し、専門施設も有している。

★ライフエンディング事業: 葬儀だけでなく「仏壇・墓の紹介」「法事の手伝い」「相続関連のサポート」「家系図の作成」等々、20種類以上のサービスを展開。

 燦HDでは至22年3月期の中計を進めている。掲げている数値目標は「営業収益229億円(19年3月期比10%強増)、営業利益30億3000万円(同4%増)」。

 播島聡社長は、「終活のコンシェルジェとしての役目を、より幅広く着実に果たしていく」としている。現状では「浮足立った」様子は見受けられない・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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