「湯潅」まで手掛ける介護業者ケアサービスの差別化戦略

2018年12月3日 12:14

印刷

 独立系の介護業者は、差別化に注力している。ジャスダック市場に上場するケアサービスなどもそんな1社。デイサービス・訪問入浴・サービス付き高齢者向け住宅・エンゼルケアの展開を4本柱としている。

【こちらも】「老人福祉・介護事業」倒産、18年上半期は過去最多に

 中でも特長的なのがエンゼルケア。「湯潅(ゆかん:遺体の清め)」を中心とした「死人」への対応である。直近の中間期決算説明会で「御社の湯潅、及びエンゼルケアの特長は」と質した。湯潅はこんな手順で行われるという。

★末後の水: 故人の口を水あるいは故人が好きだった飲み物で湿らせる。家族全員の想いとねぎらいの言葉を伝える。
★洗髪: シャンプーとリンスで髪を洗う。顔剃り、洗顔を行う。
★洗体: ボディシャンプーで故人の身体を洗い、拭く。身体は大判タオルで隠しているので、立ち合いが可能。
★身支度: 薄化粧・着替え・旅支度を行う。
★納棺: 家族と一緒に棺に遺体を安置し顔回りを飾る。

 また見送りの後の自宅の清掃や遺品整理なども行う。全国の互助会や葬儀社と提携しビジネスとしている。

 ケアサービスでは中国(上海・北京エリア)でも訪問入浴と、エンゼルケアを実施している。「中国には湯潅の慣習はない」(同社)というが現状では上海市の国営葬儀場3拠点内に湯潅専用の部屋を設置し、また故人の自宅に出向き湯潅サービスを実施している。「徐々に浸透し始めている」(同)という。

 一方「(介護士の)人材不足」に対しても策を講じている。例えば「お帰りなさい」制度。「一度当社を辞め他業態に身を置いた人は、介護業界では身につかない何かを有している。再び介護業界でという人を積極的に採用している」という。通常「出戻り組」の給与は「初入社並み」がこの業界で圧倒的多く人手不足の一因にもなっている。が、ケアサービスではかつてのキャリアと他の会社で身につけたスキル等を勘案し、復帰後の処遇を双方の相談の上で決めている。また入社3年目から「退職金」制度も導入している。

 差別化なくしては高齢化社会が進む中、競争激化を勝ち抜いてはいけない。ちなみに湯潅を行う業者はヘルスケアを含め、全国に2社しかない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事