他人の報酬が仕事の意欲を削ぐ脳メカニズムを解明 生理研の研究

2020年2月28日 15:49

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実験の概要(写真:生理学研究所の発表資料より)

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 同じ作業を行う仲間の報酬が高いと、自分の仕事の意欲が下がることは日常的にみられる現象だ。生理学研究所は25日、報酬の主観的価値が、自己と他者の報酬情報を組み合わせて得られる脳のメカニズムを解明したと発表した。

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■報酬の主観的価値を決める脳メカニズム

 「視床下部」と呼ばれる自律神経の調節に関わる脳内部位には、食糧の探索や摂取時に活動する「外側部」が存在する。従来の研究から、視床下部外側野が自己の報酬の価値を決めるのに大きく関与することが、判明している。その一方で社会的な情報処理にも、視床下部外側野が関わるとする研究が発表されているが、処理メカニズムは謎だった。

■サルを使って仮説を検証

 自然科学研究機構の研究者らから構成されるグループが注目したのが、「内側前頭前野」と呼ばれる脳部位だ。行動を起こすための動機づけに関与する内側前頭前野では社会的情報が処理され、解剖学的にも内側前頭前野と連絡しているという。

 研究グループは、視床下部外側野が自己や他者の報酬の処理機構をもつという仮説を立て、サルを用いた検証実験を実施した。パブロフの犬に代表される、刺激の反復により条件反応を生じさせる「古典的条件づけ」を、2頭の個体に応用した手法(社会的古典的条件づけ)が実験に用いられた。

 実験の結果、自分の報酬がもらえる確率が高いほどジュースをなめる傾向が強くなる一方、他者が報酬を獲得する確率が高くなればジュースをなめなくなり、自分が報酬を獲得することに対する価値が低下することが確認された。これは、自分と他者の報酬情報が報酬価値を変化させることを示唆するという。

 研究グループは報酬情報に関する脳内処理メカニズムを調査した。その結果、自己と他者の両方が視床下部外側野で統合されていることが判明。内側前頭前野から視床下部外側部へと情報が伝達されていることが確認されたという。社会的な状況下で報酬への期待や動機づけに、視床下部外側野が重要な役割を果たすと研究グループはみている。

 研究の詳細は、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌に25日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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