ダークエネルギー発見のカギとなる仮定は誤りか 韓国大学らの研究

2020年1月10日 13:34

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 「ダークエネルギー」と呼ばれる仮想上のエネルギーは、現代宇宙論において欠かせない存在であり、宇宙の加速膨張を説明するために必要だと考えられてきた。韓国の延世大学は5日、ダークエネルギー発見のカギとなる仮定が誤っていたと発表した。

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■ダークエネルギーの謎

 ダークエネルギーに類する概念として導入されたのが、「宇宙項」と呼ばれる定数だ。宇宙は静的であると考えたアルベルト・アインシュタインは、一般相対性理論と重力場方程式とが整合的になるよう宇宙項を導入した。だがエドウィン・ハッブルが1917年に宇宙の膨張を確認したため、宇宙項の存在は長年忘れ去られていた。

 宇宙項が再び注目されたのは、宇宙が加速膨張を続けていると判明したからだ。従来理論では宇宙の膨張は減速するとみられていたが、遠方銀河の超新星が理論で予測される速度よりも速く遠ざかっていることが、1998年に判明した。

 そこで、宇宙を膨張させる力の源としてダークエネルギーが想定され、宇宙項はダークエネルギーの候補のひとつとして復活した。宇宙全体のうち、ダークエネルギーは74%にも達する。

■ダークエネルギーの存在を示唆する標準光源

 ダークエネルギーの存在は、Ia型超新星と呼ばれる、白色矮星が引き起こす爆発によって確認される。銀河1個分の明るさに相当するIa型超新星の絶対等級がほぼ一定であることは、経験的に判明しているため、地球と超新星間の距離を測るための標準光源として用いられる。

 だが実際には、Ia型超新星の明るさにはバラツキがあり、超新星の減光率との相関関係があると考えられている。そこで減光率から絶対等級を推定していた。

■Ia型超新星の明るさは進化する

 延世大学、仏リヨン大学、韓国天文研究院(KASI)の研究者から構成されるグループは、この想定が誤りである可能性が高いことを示しているIa型超新星について、それが属する母銀河への分光観測を実施した。その結果、超新星の明るさが時間とともに進化することが判明。赤方偏移によるバイアスが介在するのだという。

 研究グループによると、超新星の明るさを適切に考慮すれば、ダークエネルギーの存在を想定しなくてもいいことが判明したという。

 ダークエネルギーの存在を傍証する現象として、宇宙マイクロ波背景輻射(CMB)やバリオン音響振動(BAO)が考えられる。だがCMBが宇宙モデルを支持しないことや、BAOがダークエネルギーを想定せずに加速膨張が発生しない宇宙とも整合的であることが、近年判明している。

 研究の詳細は、Astrophysical Journalの2020年1月号に掲載される予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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