NASA宇宙探査機による初の太陽観測 予想よりも激しかった太陽風

2019年12月7日 21:38

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太陽探査機「パーカー・ソーラー・プルーブ」が観測した太陽風 (c)  NASA/SDO

太陽探査機「パーカー・ソーラー・プルーブ」が観測した太陽風 (c) NASA/SDO[写真拡大]

 太陽を観測する宇宙探査機「パーカー・ソーラー・プルーブ」による報告結果が、英科学誌Natureに4日付で掲載されている。望遠鏡などの観測で明らかにされなかった太陽の動向が判明することで、太陽系誕生のプロセス解明が加速することが期待される。

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■地球の500倍の熱に耐える太陽探査機

 パーカー・ソーラー・プルーブは、2018年8月に米航空宇宙局(NASA)によって打ち上げられた探査機だ。同探査機の目的のひとつが、宇宙天気の予測だ。

 太陽表面では、「フレア」と呼ばれる爆発現象が発生する。巨大なフレアの場合、地球などの惑星の磁場と相互作用し電波障害を引き起こす。パーカー・ソーラー・プルーブは太陽が物質やエネルギーが放出する様子を観測し、太陽系惑星の周囲で発生する宇宙天気の理解を深めようとする。これにより、太陽の誕生や進化プロセスを表現するモデルの再構築にも役立つという。

 火星などの惑星と異なり、太陽探査で障害となるのが熱だ。地球の500倍もの熱を太陽は発する。そのため高温の太陽熱にも耐えられるよう、パーカー・ソーラー・プルーブは炭素繊維強化プラスチックで設計されている。

■予想よりも激しかった太陽風

 太陽から9,300万マイル(約1億5,000万キロメートル)圏内では、微小な荷電粒子の加速検出が地上から困難だった。パーカー・ソーラー・プルーブは1,500万マイル(約2,400万キロメートル)の距離まで接近し、観測の実施が可能だ。将来的には、さらに太陽に接近し観測する予定だという。

 今回明らかになったのが、太陽風の様子だ。太陽は水素やヘリウムといった軽元素からなる大気をもつ。プラズマ化したこれらの気体が吹きつけるのが太陽風だ。従来、太陽風は比較的一定の流れだと考えられてきた。今回の観測により、河川が海へと注ぎ込む河口のように、太陽風が非常に込み入った構造をしていることが判明した。

 また太陽から700万マイル(約1,100万キロメートル)の塵が疎らになる証拠が、初めて観測された。塵が高温になるとガスへと変化し、200万から300万マイルの圏内では塵のない領域が生まれるという。この現象は100年間かけて理論化されてきたが、これまで観測されてこなかった。

 今回の観測結果は、パーカー・ソーラー・プルーブによる初のスイングバイに基づくものだ。NASAによると、2020年9月に予定される6回めのスイングバイで塵のない領域の観測を実施するとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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