太陽に降る“コロナの雨”を観測 太陽の謎解明に期待 NASAの研究

2019年4月10日 16:28

小

中

大

印刷

1994年に南アメリカで観測された「ヘルメット・ストリーマ」(c) 1994 Úpice observatory and Vojtech Rušin, (c) 2007 Miloslav Druckmüller

1994年に南アメリカで観測された「ヘルメット・ストリーマ」(c) 1994 Úpice observatory and Vojtech Rušin, (c) 2007 Miloslav Druckmüller[写真拡大]

写真の拡大

 米天文物理学誌Astrophysical Journal Lettersに5日付で、太陽に降る「雨」に関する興味深い論文が掲載された。執筆したのは、アメリカ・カトリック大学の大学院生だったエミリー・メイソン氏である。

【こちらも】観測ロケット「FOXSI-3」が世界初観測した太陽コロナの軟X線データが公開

■超高温なコロナの謎

 メイソン氏ら米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのメンバーが探していたのは「コロナの雨」。巨大なプラズマの塊であるコロナの雨は、太陽の外圏大気から表面に「しずく」を垂らす現象である。

 太陽コロナの温度が表面温度の約300倍と高温なのは、70年来の謎だった。研究グループは、コロナの雨がこの謎を解く鍵だと考えていた。コロナは摂氏数千度から10万度のフレアへと過熱し、磁気線のループが拡大する。熱源から遠ざかるとプラズマは冷却され、コロナの雨が降るという。

 コンピューターでのシミュレーションによると、コロナの雨は「ヘルメット・ストリーマ」と呼ばれる、太陽表面からアーチ状に広がる磁気線が作るループ内にあると予想された。160万キロメートルもの高さをもつヘルメット・ストリーマ内を半年探したものの、メイソン氏はコロナの雨を発見できなかったという。

■メイソン氏の関心が別の謎を解く鍵に

 他方メイソン氏の関心は、加熱や冷却のサイクルとコロナの雨との関係にあった。太陽風には秒速400キロメートル以下の「遅い太陽風」と、秒速800キロメートルの「速い太陽風」の2種類がある。1990年代中盤、ヘルメット・ストリーマが「遅い太陽風」の源であることが判明した。ところがこの太陽風のガスを測定したところ、太陽風が冷却される前に、高温で過熱されることが明らかになった。

 メイソン氏は、ヘルメット・ストリーマ内部にコロナの雨が発見できたならば、コロナの雨の背後で発生する加熱や冷却の循環プロセスが判明すると考えたのだという。だがヘルメット・ストリーマ内では、コロナの雨を発見できなかった。

 ただしメイソン氏は、ヘルメット・ストリーマよりもずっと小さな構造内でコロナの雨を発見できた。この発見ではコロナの過熱は正確に説明されないが、別の収穫があったというのだ。本来閉じた磁力線のループ内でコロナの雨が発生すると考えられていたが、メイソン氏がデータを精査したところ、開いている磁場線でもコロナの雨の形成が確認されたというのだ。

 この現象を説明するために研究グループは、小さな磁場構造と遅い太陽風とを結びつけた。閉じた磁場線内で発生したコロナの雨は、閉じた磁場線と開かれた磁場線とが交差したとき、開かれた磁場線へと移動する。この磁場線の交差時に、プラズマが急速に過熱するものの、その後冷却される。この間に遅い太陽風が発生するだけでなく、プラズマの冷却時にコロナの雨が太陽へと降り注ぐのだという。

 メイソン氏は現在、新しい説明についてコンピューター・シミュレーションを行っている。観測的な証拠が確証されることを研究グループは期待している。(記事:角野未智・記事一覧を見る

関連キーワードNASA

広告