新技術ナノセルロースファイバーを使った環境省のスーパーカーとは

2019年11月23日 14:42

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木からつくる自然なクルマ(画像:京都大学の発表資料より)

木からつくる自然なクルマ(画像:京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京モーターショー2019は、移動に関する乗り物が一堂に会したような催しとなり、これまでとは少し趣向が変わっていた。しかしその中で、環境省委託事業として、木で制作された1台のスーパーカーが展示されていた。それは鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度を持つ次世代素材、CNF(ナノセルロースファイバー)を活用した未来のクルマである。

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 NCFプロジェクトは、2016年10月にスタートした事業で、22の大学、研究機関、企業等で構成される共同事業体。そして今回参考出展されたスーパーカーには、13の部品にNCFが使用されている。

 NCFは木材から科学的・機械的に処理されて取り出されたナノサイズの繊維物質で、軽さ、強度、耐膨張性で環境負荷が少ないことから自動車部品や家電、住宅建材などへの普及が期待されている。

 今回のスーパーカーに使用された13の部品は、ポリプロピレンやポリカーボネートといった樹脂が主要材料として使われているが、その中で100%NCFで制作されたのが、ボンネットとルーフサイドレールになる。

 今回の東京モーターショーに視察に訪れた小泉進次郎環境相も、実際にボンネットを片手で持ち驚きを口にした。

 すべての植物細胞の基本骨格であるナノファイバーは、地球上に1兆トン蓄積されており、これは埋蔵石油資源の6倍といわれている持続資源だ。

 日本は、世界でも類まれな森林大国であり、毎年1500万トンのCNFが蓄積されている。これは国内で使用されるプラスチックの1.5倍の量に匹敵する。

 この資源を有効活用すれば、クルマが20%軽量化でき、軽量化により燃費も約10%向上するといわれる。これによりCO2が削減されるわけで、だからこのCNFを使用したクルマが環境省のスーパーカーとして誕生した。

 そして気になるコストは、現時点でカーボンファイバーの6分の1程度でクルマや家電に使用ができるという。

 環境省は、自動車部品で耐久性や耐熱性の評価を進めながら、CO2削減効果と評価・実証を進めていくようだ。

 すでにスポーツシューズメーカーのアシックスが、2018年にかかと部分にCNFを使い耐久性と軽さを兼ね備えたシューズを販売した。このことから、日本発の究極のエコカーが誕生して街を走る日がそう遠くないかもしれない。(記事:小泉嘉史・記事一覧を見る

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