海洋の酸性化が一酸化二窒素増加を招く、従来の見解覆す発見 東工大などの研究

2019年11月14日 09:25

小

中

大

印刷

研究で海水を採取した場所(地図中の星印)および亜寒帯の観測点KNOTにおける採水作業の様子。研究船から採水器を海中へ投入し、硝化が活発に起こっている水深100-200mの海水を採取した。(画像:東京工業大学発表資料より)

研究で海水を採取した場所(地図中の星印)および亜寒帯の観測点KNOTにおける採水作業の様子。研究船から採水器を海中へ投入し、硝化が活発に起こっている水深100-200mの海水を採取した。(画像:東京工業大学発表資料より)[写真拡大]

写真の拡大

 従来、海洋の酸性化は一酸化二窒素(N2O)の生成を弱めると考えられていた。しかし今回の研究では、それは逆であり、実際には海洋酸性化がN2Oの生成を強めるという事実が発見された。

【こちらも】養豚施設から出る汚水の窒素濃度を低減、温室効果ガスの抑制効果もあり

 研究に参加しているのは、東京工業大学の吉田尚弘教授(地球生命研究所主任研究者兼務)と豊田栄准教授らの研究チーム、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)、東京大学および海洋研究開発機構(JAMSTEC)。

 一酸化二窒素はまたの名を笑気ガスとも言う。人間が吸うと陶酔を生じるからであり、それを応用して麻酔に用いられることもある。そのほか、工業用途、もっと変わったところでは料理にも使われたりするのだが、オゾン層を破壊する一酸化窒素を生み出す原因物質であったり、それ自体が温室効果ガスの一種であったりもする。

 さて、地球の酸性化というのは、二酸化炭素によって引き起こされる現象である。CO2が水に溶けると水素イオンを放出する。これがサンゴの破壊などをもたらすことで問題になっているのだが、2011年に発表されたBemanらの論文では、海洋酸性化は微生物の硝化と呼ばれる作用を弱める為、その副産物として放出されることになる一酸化二窒素の生成は弱められるとしていた。

 今回の研究は、2013年から2016年にかけ、北西大西洋の亜寒帯から亜熱帯までの5箇所で海水を収集、N2Oの生成量を調べたものである。その結果として、Bemanが予測したような、一酸化二窒素の生成の弱化は生じてはいなかった。

 それどころか、亜寒帯で採取された試料からは、逆にN2Oの生成が亢進している事実が確認されたのである。

 N2Oの増加は温暖化を加速させオゾン層の回復を遅れさせるものであるから、他の海域でも調査を行うことが急務であると研究はまとめられている。

 なお詳細は、Nature Climate Changeに発表されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連キーワード東京大学東京工業大学海洋研究開発機構