50年前に予測された少子高齢化を回避できなかった責任は誰にある!?

2019年10月10日 08:34

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 9月26日、以下の様な2つの報道に接した。

【こちらも】少子高齢化に人口都市部集中化のいま、医療体制への不安

■1:厚労省は全国の公立病院・赤十字・済生会といった公的病院のうち、「再編統合の議論が必要」と位置付けた424の医療機関を実名で公表した。2025年度(団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる)を念頭に、医療費の膨張を抑える観点から効率的な医療体制づくりを加速させるのが狙い。対象医療機関の扱いを9月までに取りまとめるよう、近く各都道府県に要請する。

■2:厚労省が2018年の医療施設調査の結果を公表した。全国で産婦人科や産科がある一般病院は前年比6減の1307施設で、統計を取り始めた1972年以降で最少を更新した。減少は28年連続となった。厚労省の担当者は、「出生数が減少する一方、一般病院の統廃合などで大病院に診療科が集約化していることが背景にあるのではないか」としている。

 こうした報に接し「少子化」「高齢化」「社会保障費(医療費)負担増」という時代を、あらためて痛感させられた。と同時にこう捉えた。

 「■1」に関しては、原則的には「実名424医療機関が所属する都道府県への要請」は法的拘束力を持つものではない。が、再編統合を促すであろうことは容易に想像がつく。

 また「■2」については、「少子化」が「女性の社会進出」と表裏一体の関係にあることは一面の事実であろう。「待機児童問題は解消されつつある」とされるが、「女性活躍社会」を望むなら、待機児童施策を先ず徹底して打つべきだったろう。が、現状の「産婦人科・産科がある一般病院の減少」は「■1」とも絡み、さらに進んでいこう。

 ここまで思いが至った時、ある一人の男の顔を鮮明に思い出した。S・S。高校の同級生である。慈恵医大に学び大学病院勤務を経て故郷で開業した。産婦人科が専門である。

 男子校ということもあり、S・Sにはからかい半分に辛辣な言葉がしばしば浴びせられた。「Sよ、お前は産婦人科の医者になるんだって、なにを考えているんだ。この●●野郎が」。S・Sがそんな興味本位の声に、こう言い切ったことがある。「あのな、命を生みだす医者っていうのは産婦人科医だけだ」。

 同窓会名簿を頼りに云十年ぶりに電話をした。「いまは、娘婿が後を継いでいる。婦人科・産婦人科だよ」。そして彼は「これはお前さんのマターだろうが、日本の行政は常に後手だよ。少子高齢化は50年も前から予想されていた話だろう」とした。

 50年も前、の論拠を調べてみた。ネット検索で、こんな事実を見つけた。いまから52年近く前の1967年4月27日の読売新聞が<ふえる老人 減る子供 厚相 審議会に意見を聞く>といったタイトルで、以下の様な内容を報じていた。

 「昭和90年(注、2015年)には、幼少(15歳未満)人口17%・成人層63%・老齢層(60歳以上)20%が想定される」。実際の15年の人口構成をみると「12.5%、61.5%、26%」。

 歴代の行政・為政者は、「審議会答申を実際の政策に反映できず、今日の少子高齢化を避けることができなかった」と批判されても仕方あるまい。そう、モータリゼーションの時代を見誤り、「首都高3車線論を封じてしまった」が故の「渋滞社会」出現とまさに同様である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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