従来予想の1万倍速い応答示す液晶分子の観測に成功 分子を光で制御へ 筑波大など

2019年9月16日 17:09

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今回の研究で観測されたアゾベンゼン分子の集団運動(画像: 筑波大学の発表資料より)

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 現在実用化されている液晶は有機ELなどと比較して応答が遅いことが一般的に知られている。そんな液晶の応答速度を1万倍以上高速にする可能性を示す成果が13日に、筑波大学、東京大学の研究グループから発表された。

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 今回の研究で液晶として用いられたのはアゾベンゼンという分子である。このアゾベンゼンの特徴は、光を受けることで分子の形が変化する「光異性化」という現象が起きることが挙げられる。現在の一般的な液晶が光ではなく電気を用いてスイッチングを行っているのと対照的である。

 液晶は分子が大量に集まって集団をなしているような状態であることから、光異性化による応答は遅いと予想されていた。アゾベンゼン分子単独での光異性化であれば1兆分の1秒程度で生じると報告されているが、液晶の場合は光異性化に100万分の1秒以上かかると考えられてきた。しかし、それを確認するためには非常に高い時間分解能を持つ測定法が必要であることから、実証はされてこなかった。

 今回研究グループは、「超高速時間分解電子線回折法」を用いた。これによって、光照射で生じる瞬間的な分子の周期的な構造の変化を、直接観測することが可能となった。結果、アゾベンゼンが100億分の1秒という従来予測の1万倍以上の速さで応答することを突き止めた。この予想以上の応答の速さはアゾベンゼン分子間の相互作用が影響していると考察している。

 さらに照射する光を制御することにより、アゾベンゼン分子の並びを狙った方向に揃えることにも成功している。

 今回の研究成果の意義としては、分子の集合体の分子単体からは考えられないような機能、性質についての知見が得られたことも大きい。これによって光駆動型の液晶素子の応用可能性が広がった。

 具体的な応用先としては光スイッチや光センサー、光アクチュエーターなどがある。これらはいずれも分子ロボットや人工組織などの実現において重要な素子たちである。

 研究成果は13日付のNature Communications誌のオンライン版で掲載されている。

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