低電圧でも発光できる有機EL 仕組みが実験で明らかに 理研

2019年6月7日 20:33

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実験に使用された有機分子PTCDAの発光スペクトル。有機ELデバイスに不可欠なりん光が低電圧で放射される(画像: 理化学研究所の発表資料より)

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 理化学研究所は6日、有機ELデバイスで重要な役割を果たすりん光を、低電圧で放つ仕組みを発見したと発表した。青色の発光が難しい有機ELデバイスの新材料について、商用化が期待される。

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■有機分子の発光メカニズム

 近年TFT液晶に代わって、スマートフォンの画面などに使用されているのが、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)だ。液晶やプラズマのように別の光源を必要とせず、有機EL自体が発光するため、軽量化や薄型化が実現できるというメリットをもつ。

 物質にエネルギーを照射すると、エネルギーの状態が遷移する。時間が経過すると安定したもとの状態へと戻る。この際に物質が発光するのが、「蛍光」のメカニズムである。管内の気体に紫外線を照射し発光させる蛍光灯や、電圧をかけて輝かせる発光ダイオードなどに、このメカニズムは利用されている。

 有機分子の場合、エネルギーを照射すると正の電荷と負の電荷が結合し、一種の粒子状態になる。これが「励起子」と呼ばれるもので、時間が経過すると発光し元の安定した状態へと遷移する。ところが有機分子の一部では、励起子が分裂し別種の励起子が生み出される。これが「三重項励起子」と呼ばれるものだ。時間が経過すると三重項励起子もまた元の状態に遷移するが、その際に「りん光」が放射される。有機ELの発光には、蛍光とりん光の2種類が利用されている。

 従来の有機ELでは三重項励起子が形成される割合が高いため、発光において重要な役割を果たす。ところが三重項励起子が形成されるためには、高い電圧が必要である。とくに波長の短い青色はエネルギーが高く、色の形成には高い電圧を要する。結果として材料が劣化しやすいため、青色のりん光を放つ材料は現状では商用化されていない。

■低電圧での青色発光デバイスの商用化に期待

 研究グループは、「走査トンネル顕微鏡(STM)」と呼ばれる装置を活用し、有機分子の発光メカニズムを観測した。STMを活用すると、ナノメートル単位で材料内部の電荷の状態が計測されるという。

 研究グループは、有機分子のPTCDA分子を活用した、単純な有機ELデバイスをSTMで観測した。その結果、りん光を放つ三重項励起子が低電圧で形成されることが明らかになった。研究グループは実験に加え、低電圧で三重項励起子が形成されることを理論的にも証明している。

 形成効率の高いりん光が放射される仕組みを活用した有機ELデバイスを設計、開発できれば、エネルギー効率の高いデバイスが可能になる。また低電圧で発光できるため、耐久性の観点から材料の選択の幅が広がり、青色のりん光を放つ材料を活用した有機ELデバイスの商用化が期待される。

 研究の詳細は、英科学誌Natureオンライン版にて6日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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