東大、重力波望遠鏡によりダークマター発見に迫る新手法を考案

2019年9月12日 08:26

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重力波検出器を用いた場合の、あるアクシオンの質量(横軸)に対する結合定数測定の精度(画像: 東京大学の発表資料より)

重力波検出器を用いた場合の、あるアクシオンの質量(横軸)に対する結合定数測定の精度(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]

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 この宇宙を占める元素で最も多いのは水素であるが、その総量は宇宙全体の質量の5%に過ぎない。宇宙の質量の約4分の1を占めるのは光を発せず、目に見えない暗黒物質であると考えられているが、実はその正体については謎が非常に多い。

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 今回東京大学で考案された技術は、暗黒物質の正体であると考えられている仮想上の素粒子アクシオンを観測することで、暗黒物質の謎を解明するものである。

 実際に宇宙に存在するアクシオンを調べる方法としては、従来、マイクロ波キャビティー実験、太陽アクシオン探査、光学望遠鏡での探査が考案されていた。また実験室的な探査実験方法の一つとしてレーザー・アクシオン探査技術があり、観測データにばらつきが少ないことが知られていた。

 アクシオンはレーザー光の偏光を回転させる性質があり、これをレーザー干渉計で測定することにより、アクシオンの結合定数を導き出すことができる。いっぽう重力波望遠鏡とは、時空のゆがみを波として捉える目的で考案された、高出力のレーザー光源や超高真空装置を装備した一種のレーザー干渉計だ。日本で現在建設中の重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)は、3kmの基線長を有する巨大な装置である。

 基線長が長ければ長いほど小さな周波数の重力波を捉えることが可能で、基線長が300mの場合、MHz帯の重力波を捉えられるが、KAGRAでは数十kHzの重力波を捉えることが可能になる。遠い天体からやってくる重力波は遠ければ遠いほど宇宙の膨張による赤色偏移の影響が大きくなり、周波数が小さくなるため、基線長が大きいほど、より遠くの天体からやってくる重力波を捉えることが可能になる。

 この強力なレーザー干渉計である重力波望遠鏡を用いれば、アクシオンの光に及ぼす影響度合いを表す結合定数を、従来の手法と比べ十倍以上の高精度で導出することが可能になるという。

 もし、KAGRAでこの技術を適用できれば、今年から始まる重力波運転時の観測データを用いてアクシオンの探査が可能になる。アクシオンの存在は、まだ直接確認に成功した事例は世界でもないが、もしそれに成功すれば、ダークマターの謎が一気に解明されることになるだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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