小地震と大地震、揺れ始めでは区別できない 東大の研究

2019年9月5日 16:34

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解析地域と大きめの地震(大きな丸:赤=極めて似ている、オレンジ=良く似ている、黒と灰色=その他)、観測点(緑の小さな丸)の分布を表す図。極めて似ている地震とよく似ている地震は陸地のそばに多い。(画像:東京大学発表資料より)

解析地域と大きめの地震(大きな丸:赤=極めて似ている、オレンジ=良く似ている、黒と灰色=その他)、観測点(緑の小さな丸)の分布を表す図。極めて似ている地震とよく似ている地震は陸地のそばに多い。(画像:東京大学発表資料より)[写真拡大]

 地震予測というのは社会的要請は高いのだが、非常に難しい研究分野である。今回の研究報告は、小さい地震も大きい地震も発生直後の揺れ方は酷似している例が多々あるため、発生直後に震度予測を立てるのは難しいというものだ。研究を行ったのは、東京大学の井出哲教授である。

【こちらも】南海トラフ地震の予知は困難、「100回中99回で予知失敗」との集計結果

 昨今、地震発生から震源の発表までのタイムラグは随分と短くなった。緊急地震速報の仕組みというのは音楽のイントロクイズにも似ていて、地震観測点で観測した揺れの始まりの瞬間に、どこで地震が発生したかを推定することができる。

 それはよいのだが、同じ発生直後の情報から最大震度やマグニチュードまで推定することは可能だろうか。これが実は難しいらしい。

 単純な問題として、大きな地震に固有の揺れ始め方があり、小さな地震とは異なるというのなら、それを検出することで大きな地震を予測することが可能であると考えられる。しかし、2018年の研究で、井出教授は茨城県沖で起きた大きさの違う二つの地震が、ほぼ同じ始まり方をしているという例を発見した。

 これは興味深い事実ではあるが、一例だけであるのならば偶然ということで済ませられるかもしれない。そこで井出教授は、今回地域と期間をより広げて網羅的な探索を行い、このような一致が普遍的に見られるのかどうかを調査した。

 北海道から関東までの千島日本海溝、約1,100キロメートルかける250キロメートルの範囲を設定し、まずマグニチュード4.5以上、深さ70キロメートル未満の地震を記録から抽出した。条件に該当する地震は2,500件ほどあった。

 さらに、それらの地震の周囲で発生したマグニチュード2以上4未満の小地震を抽出したところ、約10万件あった。ペア数だと34万である。

 それらを比較したところ、揺れ方の始まりが極めてよく似たペアが多数発見されたという。

 以上のことから、観測点における地震波の始まりから地震の規模を推定することは残念ながら見込みのない戦略である、ということが言えるという。

 なお研究の詳細は、Natureで発表されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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