「結果」と「プロセス」の非対称は長続きできない

2019年9月2日 17:14

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 直接面識がない社長のことで、ある知人からの聞いた話です。
 その会社の業績は伸びていて、景気がよく見えるそうです。ただ、その経営手法が常識的に言われることとは反対のことが多く、特に社員に対する姿勢が「甘やかさない」という言葉のもとで、脱法的な行為も含めていろいろあるそうです。

 例えば「育児休業」などは、「休みたければ辞めてほしい」などとあからさまに言います。男性の育児休業などはもってのほかだそうです。時短の話も「うちの会社では論外」などといって取り合いません。
 「働き方改革」などというものは、社員の甘やかしでしかなく、自分の会社には関係ないとまで言い切ります。辞めていく社員は間違いなく多いですが、代わりに入社してくる人も、なぜかそれなりにいるそうです。歩合給などによって給与待遇がそれなりだからではないかと、その知人は言っています。

 少なくとも私が知っている経営良好な会社では、社員の待遇アップや職場環境づくり、社員との関係づくりやモチベーションアップの仕掛けなど、「働き方改革」でいわれること以上の工夫している社長がほとんどです。
 しかし、この社長は、社員との協働意識や社員との仲間意識、社員への感謝などは無縁の様子で、周りの人から見ればまさにブラック企業です。でも業績はいいのです。

 「“結果”と“プロセス”の非対称」といえますが、これは往々にして起こることです。例えば企業人事にかかわる施策では、一般的に良いとされることをしても、それが業績につながるとは限りません。
 良い経営をしていると言われている会社でも倒産するのと同様に、悪いと言われる経営をしていても、それなりに結果が出ている会社があります。

 これをどうとらえればよいかといえば、「良い経営」「良い人事」といわれる施策は、あくまで原理原則に過ぎないということです。原理原則というのは、定石やセオリーと同じ意味で言っていて、それに則れば7割くらいの確率でうまくいく、残り3割の範囲でも大きな失敗にならないということです。あくまで原理原則なので、そのやり方から外れた成功は当然あります。

 これはわりといろいろなことに当てはまり、例えば野球やゴルフのようなスポーツでも、すごく独特な投げ方や打ち方で、良い結果を出す人がいます。「セオリーに反している」と、直そうとする人がいますが、その人の感性に合ったやり方で結果が出ているのであれば、別に問題ありません。
 最近はいろいろな競技で、すごく個性的な動きの選手がいますが、無理してセオリーに合わせない指導がされているからでしょう。それが身について技術として確立していれば、それがその人の「原理原則」になったと言えますが、これは他人には真似しづらく、多くの人に当てはまる本当の意味での「原理原則」とはなりません。

 企業人事の中でも、「原理原則」については同じことがいえます。社員の自主性を尊重して失敗した会社があったり、社員の裁量を狭めて不満が沸騰しても、それで業績回復した会社があります。やはり原理原則のあてはめ方は、会社の状況によって違います。

 前述の「甘やかさない」会社もそういう見方はできますが、私はその状態が長く続くとは思っていません。それは、例えば「目標達成で高い報酬」など、会社と社員の間でお互いWin-Winになるパターンがとても少なく、今のバランスが一つでも崩れてWin-Loseの関係が増えると、あっという間に結果が出なくなるからです。原理原則を外しても成功できる幅は意外に狭く、少しの環境変化ですぐにその幅を踏み外します。

 「“結果”と“プロセス”の非対称」は、自分の本当の実力を見誤ったり、今の課題を安易にとらえたりしがちになります。前述の社長に対しても、周りは「勘違いしている」「調子に乗っている」などといって、先行きを案じたり批判したりする声がいくつもあるそうです。

 「“結果”と“プロセス”の非対称」はよくあることですが、原理原則を無視した成功は難しく、その成功は長続きさせづらいものです。
 原理原則、セオリー、定石は、知っておいた上で自社の取り組みを考えることが望ましいです。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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