生保大手が繰り出す施策の、先にあるもの

2019年8月28日 13:27

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 昨今の大手生保の動向を見ていると、「じっとしていてはいられない」という思いがヒシヒシと伝わってくる。

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 例えば第一生命HDが4月に投入した「第3総合口」。一口で言うと「信託」分野を深耕する挑戦商品。企業年金の預かり資産を増やすことを目的にしている。超低金利下で生保本来の予定利率(利回りを約束する)商品の運用は、厳しい。どうやって「生保の財産」である預かり資産を増やしていくか、に照準を合わせた施策だ。

 具体的には、予定利率なしの企業年金資産を現状の1兆2000億円水準から「2021年3月末までに1兆5000億円に増やす」としている。が、預託する企業年金は「運用難という状況を鑑み、仕方ない選択肢」と「増額営業」に理解を示すのだろうか。その当たりを第一生命側も十二分に承知している。ブルームバーグのインタビューに稲垣精二社長は、商品性をこんな風に強調している。

 *ジャナス・ヘンダーソン(英大手運用会社)のチーフ・ストラテジストの(1997年のノーベル経済学賞受賞者)マイロン・ジョールズ氏が開発に関与した、クオンツ運用(数理モデルに従った運用)法に基づく商品。

 *グローバルな株式・債券を投資対象に先物やETFを活かし、「国内短期金利に年率5%程度の上乗せ」「リスク水準6-7%の運用」を目指す商品。

 稲垣氏は、信託が主導権を握っている年金運用に「アグレッシブにしっかり入っていきたい」と言い及んでいる。

 AI導入に積極的な日本生命では、遂に(?)AIが(営業トークを)評価するスマホアプリを開発・導入した。有償で貸与されるというが、どんな風に活かされるのか。こんな枠組みだという。

 「営業職員がアプリ搭載のスマホに対し、保険商品の提案を行う」
 「職員の話す際の表情・速度・明瞭さ等をスマホのカメラが認識する」
 「AIが成績優秀な職員と照らし合わせ、評価する」
 「評価は研修担当者に送信され、助言が行われる」

 従来の営業職員研修は「ロールプレー(営業職員が営業役と顧客に分かれ遣り取りをする)」が主体だった。が、大勢の営業職員の研修は相応の時間・費用が不可欠。それをカバーすることでありアナリストの言を借りれば「低迷に甘んじることのない意識ある営業職員出でよ、という日生一流の研修法」といえる。

 そして先に財経新聞でも書いたが「伸長著しい少額短期保険」に住友生命が、本格参入した。8月21日に1984年設立の斯界の老舗格:アイアル少額短期保険の全株を取得、子会社化した。

 前にも記したがヒット商品の一つに「無縁社会のおまもり(孤独死保険)」を持つほか、家財保険や医療保険など幅広く展開している。「若者層を長期保険市場の土俵に引き上げる入口に、という展開だ。子会社化による直接参入は、他社の追従を招こう」とする見方が強い。

 生保業界に明るい筋は、「超低金利下に喘いでいるばかりでは、勝ち残り・生き残りが厳しいという認識が生保業界に強い」とした。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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