超伝導技術を駆使した高性能電波観測装置 日蘭共同で開発

2019年8月8日 21:07

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DESHIMAが観測したオリオン大星雲に存在する複数分子からの電波 (c) DESHIMA Project Team/Endo et al.

DESHIMAが観測したオリオン大星雲に存在する複数分子からの電波 (c) DESHIMA Project Team/Endo et al.[写真拡大]

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 国立天文台は6日、最先端の超伝導技術を駆使した高性能の電波観測装置「DESHIMA」を開発し、電波観測に成功したことを発表した。遠方の天体に存在する複数の分子が放つ電波を同時に観測できるという。

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■宇宙地図の作成に不可欠な電波望遠鏡

 天体の観測には、可視光線だけでなく放射されるあらゆる電磁波が必要になっている。とりわけ、広い周波数帯の電波を一度に分光できる観測装置は、何億光年も彼方の銀河の距離を効率よく測定するのに不可欠だという。

 天体から放射される電磁波において、宇宙の膨張の影響で「赤方偏移」と呼ばれる波長が長くなる現象が起きる。この赤方偏移を測定することで、天体までの距離が計測される。これらの情報をもとに作成された宇宙の3次元地図は、宇宙の成立や銀河の進化を探るヒントになるという。

 赤方偏移の精度を上げるためには、幅広い周波数帯域の電波を観測することが重要になる。デルフト工科大学、蘭宇宙研究所(SRON)、ライデン大学、東京大学、国立天文台、名古屋大学、北海道大学、埼玉大学をはじめとする国際研究チームは、高精度で赤方偏移を測定できる電波観測装置「DESHIMA」を開発した。DESHIMAは、江戸時代にオランダと日本の交流の窓口であった長崎県の出島にちなんだ略称だという。

■活用された超伝導技術

 DESHIMAの実現には、ナノテクノロジーが不可欠だという。電波を波長ごとに分ける「フィルターバンク」がDESHIMAに搭載されている。超伝導状態になった窒化ニオブチタンの配線内を電波が通ると、通り道に隣り合うように複数並んだつづら折りの配線がフィルターとして機能する。

フィルターバンクにより仕分けされた電波は、検出素子のMKIDで捉え、波長の短いサブリミ波や遠赤外線を高感度で捉えることが可能だ。DESHIMAはフィルターバンクとMKIDを組み合わせた世界初の観測装置だという。

■複数の分子からの電波を同時に観測可能

 DESHIMAは、南米チリのアタカマ高地に設置されたアステ望遠鏡に搭載され、2017年10月から11月にかけて、試験運用が実施された。地球から2.9億光年彼方の銀河「VV 114」が観測対象に選ばれ、一酸化炭素分子が放つ周波数約340ギガヘルツの電波が検出された。この銀河から過去に観測された赤方偏移と同じ結果が得られたことから、同観測装置の実用性が実証されたかたちだ。

 またオリオン大星雲の観測を実施し、一酸化炭素、ホルミルイオン、シアン化水素からの電波を一度に検出することにも成功した。望遠鏡全体を振り、空をスキャンすることで、星雲内の分子の分布を描き出すことにも成功した。

 研究チームは、現在の1画素から16画素の電子分光撮像カメラに拡張するなど、装置の性能のさらなる向上を目指すという。これにより、効率的に宇宙の3次元地図を作成でき、銀河の進化過程解明に役立つとしている。

 研究の成果は、英天文学誌Nature Astronomyにて6日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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