シャープの再建本格軌道は実現するのか

2019年7月23日 09:12

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 株価はシャープの「再建軌道本格化」に対し期待をしながらも、一抹の「?」を禁じざるをえないでいる!?

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 2016年8月、傘下入りした台湾の鴻海精密工業から載正呉が社長に就任しシャープの再建は始まった。16年初値の126円が鴻海主導の再建開始で17年4月には504円まで買いなおされた。そして17年9月末の10株を1株とする株式併合、18年入り後の株式償却を経て18年2月1日には4050円まで上昇した。

 本稿作成中の時価は当然といえる「利食い先行」で1300円台半ばから終盤水準。斯界のアナリストの予想株価を示すIFIS目標平均株価は、1400円にとどまっている。

 この間、載体制下で徹底したコスト削減や鴻海の販路活用で17年3月期には3年ぶりの営業黒字を実現。17年12月には東証1部に復帰した。更には19年6月の事業説明会の席上で載氏は「経営再建完了」を宣言した。

 シャープが金融機関向けに発行していた優先株(計20万株)について1月に9万2000株、そして6月21日の10万8000株の買い戻しで「完了する」ことを裏付けとした宣言だった。7月には優先株を普通株に転換する権利が発現する直前だった。

 鴻海にとっても「主導権」に緩みが生じかねない大きな鬼門通過だった。だがシャープの前3月期は6.6%の営業減益(841億4000万円)と足踏みを余儀なくされた。載氏も6月25日の株主総会で再建を牽引してきた「中国(のテレビ)事業で(シェア拡大を最優先に執った結果として巻き込まれた値下げ競争で)失敗した」と認めざるをえなかった。それだけに「再建軌道」を突き進む事業柱への疑問から、今期の「18.8%の営業増益(1000億円)」計画にも株価は戸惑いを示す結果となった。

 「強み」とされる液晶パネル部門ではアップル(アイフォーン)の不振から「用途範囲拡充」を目指し、東芝からPC(ダイナブック)事業を譲受するなどそれなりの策を見せている。北米テレビのブランド使用権を中国ハイセンスから奪回し、再度テレビ市場でのリベンジを図る構えも見せている。またスマート家電での中国市場侵攻の姿勢も明らかにしている。

 冒頭に株価は「期待しながらも」と記した。それは先にも記したことがあるが5月に開始したスマートフォンアプリで家電を一括管理できるサービスの開始であり、今秋からスタートさせるクラウドサーバーを含むシステムのプラットホームをライバルメーカーにも開放する流れを指す。

 同業他社製品との接続を可能とすることで、シャープは「夕食は何にしようか」と話しかけると調理経験を蓄積した電子レンジが「〇〇〇などどうですか」と答える。と同時に冷蔵庫が〇〇〇の食材の安売り情報を音声で教えてくれる。といった我が身を呈してでも「出遅れ感」があるIoT(スマート)家電での、失地挽回の狙いがある。

 そうした流れを株価が織り込むか否かは、まずは今期の中間期計画(営業利益440億円)のクリアを確認したい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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