「グローバルニッチ」トップの日本企業、売上伸長も競争激化 経産省調査

2019年6月18日 11:57

印刷

 経済産業省の調査によると、グローバルニッチ市場でトップを占める企業では売上が伸びている一方、市場の拡大や企業間競争も進んだことで市場シェアなどがわずかに減少していることが分かった。

【こちらも】京写が中期計画をローリングし「グローバルニッチトップ」を目指す

■グローバルニッチトップ企業の5年後比較

 17日、経済産業省が「グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題」を発表した。これは、2013年の「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」にて選定した企業を対象として調査したもので、100社中、回答のあった75社分を集計・分析している。

 売上高(いずれも平均値)は、2013年の319億2,100万円から18年の407億4,200万円に、営業利益率も11.0%から11.4%に増加した一方、市場シェアは58.7%から55.0%に、海外売上比率も46.6%から44.7%に減少している。これについては、市場規模は523.2億円から700.4億円に増加したものの、国内・海外の競争者数も13.3社から14.5社に増えているため、「市場自体が成長し、競争者が多少増えた影響あり」と見ている。

■プラス要因は「競争力の向上」や「営業活動」

 世界シェアに影響を与えた要因を尋ねたところ、最も多かったのは「製品・サービス自体の競争力が向上した」で59.7%、ついで、「自社の営業活動が奏功し、海外販路が拡大した」が56.9%、「取引先企業の製品・サービス需要に連動して需要が増えた」が54.2%、「市場動向が変化し、需要が増えた」が50.0%などとなっている。

 一方でマイナスの要因として、「競合他社の台頭・躍進があった」が23.6%だったほか、「製品・サービス自体の競争力が向上しなかった」「自社の営業活動が奏功せず、海外販路は拡大しなかった」「市場動向は変化し、需要が減った」との回答もあった。

■海外拠点は製造販売ともに中国が多数

 製造拠点について尋ねたところ(複数選択可)、最も多かったのは「国内のみ」で47.3%。ついで、中国(43.2%)、北米(27.0%)、アセアン(27.0%)、ヨーロッパ(13.5%)、韓国(12.2%)、台湾(10.8%)、インド(6.8%)などの順。また販売拠点について(複数選択可)は、国内が最も多く91.9%。ついで、中国(63.5%)、北米(60.8%)、ヨーロッパ(58.1%)、アセアン(44.6%)、韓国(44.6%)、台湾(35.1%)、インド(27.0%)などとなっている。

■模倣対策に特許を取得しない企業も

 海外における課題について尋ねたところ、最も多かったのは「規制や制度の違い」で55.4%、次に「模倣品の発生」が51.4%と、この2つが多い。ついで、「売掛金回収の引き伸ばし」が23.0%、「極端な短納期発注」が17.6%、「取引先からの技術開示請求」が16.2%、「現地社員による知的財産の流出」が14.9%などとなっている。

 知的財産への対応については、「特許を取得し、模倣は特許侵害で対応する」が45.8%で最も多かったものの、「容易に公開されるため、原則特許は取得せず企業秘密としている」が12.5%、「重要な技術は企業秘密とし、他社に取得されると不都合な範囲に限って特許を取得する」が33.3%と、あえて特許を取得しない企業に分かれている。そのほかに、「特許を公開しても同一の製品を製造される恐れは少ない」(4.2%)、「特許の取得を模倣の可能性について特段考慮していない」(2.8%)などの回答もあった。

■日本の隠れたチャンピオン企業

 資料では、戦略・マーケティングのコンサルティング会社サイモンクチャー&パートナーズの会長であるハーマン・サイモン博士が、自著「Hidden Champions of the 21st Century」(邦訳「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業」)にて取り上げた企業を紹介している。

 日本企業では、精密溶接の「ミヤチテクノス」、航空機用キッチンとトイレの「ジャムコ」、金コーティング用ファインケミカルの「日本高純度化学」、眼科医療用機器の「ニデック」、チタンの「東邦チタニウム」、小型タッチパネルの「日本写真印刷」、LCDパネルやコーティング装置の「アルパック」、30ミリのシリコン・ウェハーの「SUMCO」、原子炉収納容器の「日本製鋼所」を、世界市場ナンバー1の企業として挙げている。(記事:県田勢・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事