AIロボットによるサンゴ礁保全作戦 豪グレートバリアリーフで

2019年6月8日 17:39

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RangerBot(画像: QUTの発表資料より)

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 オーストラリア大陸の東北海岸、クイーンズランド州沖に広がるグレートバリアリーフ。長さ2,600kmを超える世界最大のサンゴ礁として知られている。30種類のクジラやイルカ、6種類のウミガメの他、400種類のサンゴと1,500種類以上の魚たちがすんでいる。この豊かな海から採れる水産物は10億人の命を養い、7万人の人々の仕事がこの海に関わっているとされている。

【こちらも】グレートバリアリーフの保護に約400億円を投入、オーストラリア政府が表明

 グレートバリアリーフの生態系は悪化の一途をたどっており、過去30年間で全サンゴ礁の50%が失われたという。地球環境の変化や、農業と生活排水の影響、そしてそれによって引き起こされた水質変化によるオニヒトデの大量発生が、サンゴ礁消失の主要な原因とされている。

 オーストラリアではオニヒトデの被害の拡大を防ぐため、ダイバーによる捕獲や毒殺、水中にネットを張って移動を制限するなどの対策で、サンゴへの影響を食い止めようとしているが、高額なダイバーの人件費を考えるとこの作業をリーフ全域で行うことは難しい。

 クイーンズランド技術大学(QUT)が開発したロボットが、この課題に対する解決策となるのではないかと期待されている。今回はオーストラリアから、AIを搭載したオニヒトデ捕獲ロボットによるサンゴ礁保全作戦を紹介する。

●オニヒトデ捕獲ロボットの登場

 このロボットは、レンジャーボット(RangerBot)と名づけられた円筒形の魚雷型ロボットだ。QUTの開発したこの水中ロボットは、3つのスクリューとGPSを装備し、自動で海の中を航行できる。

水中では8時間連続で活動でき、1日で約28kmを移動してサンゴ礁を監視する。人間のダイバーでは、潜水活動は1日3時間が限界で、カバーできる海域も1km程度であることと比較するとロボット化の意義は大きい。

 RangerBotにはソナーとカメラに人工知能が搭載され、水中のオニヒトデを「見つけて」これを処分することができる。AIはGoogleの非営利活動チームが開発したもので、テストでは99%の確率でオニヒトデを正確に見分ける。3D印刷で作った偽者のオニヒトデも見破ってしまう識別力だ。

 水中をあらかじめ定められたルートに沿って移動しながら、カメラで海底をスキャン。紫の体色と這うような動き、そして特徴的な居場所を手がかりにオニヒトデを探知する。オニヒトデを見つけたらアームを延ばし、毒液を注射。これは内部からオニヒトデを消化する消化液だ。

 活動時間がダイバーより長いだけではなく、RangerBotは夜でも活動することができる。オニヒトデは夜のほうが活動的になるため、RangerBotによるナイトハンティングは非常に有効だ。

 人間のダイバーであれば、6人がかりで1年活動してもグレートバリアリーフの半分しか見ることができないが、6台のRangerBotは同じ期間にグレートバリアリーフの17倍の距離を探索することができる。

●グレートバリアリーフ保全プロジェクトとテクノロジー

 このプロジェクトは、非営利団体のテクノロジーを支援するGoogleの「Impact Challenge(インパクトチャレンジ)」で、75万豪ドル(約5,700万円)の支援を獲得した。この資金により、RangerBotの実用に向けて、さらに小型化した高性能のオニヒトデハンターロボットが誕生する見込みだ。

 グレートバリアリーフ協会の試算では、RangerBotのコストはダイバー1年分の人件費の半分で済む。実働時間3倍、活動能力は34倍でコストは半分、しかも深夜作業もOKだ。協会ではこのAIロボットがグレートバリアリーフの環境保全に大きく貢献すると期待している。

 グレートバリアリーフのサンゴ礁を守るためには、オニヒトデを退治するだけでは十分ではない。一旦、オニヒトデを駆除したとしても、彼らはまた次の繁殖期には現れてサンゴを食べるだろう。重要なのはサンゴ礁の健全な生態系を復活させるための総合的な活動だ。

 農地から流入する土砂による水の汚濁を防ぎ、肥料により富栄養化した水質を管理しなければならない。生活排水に含まれる漂白剤などの化学物質の影響も測定し続ける必要がある。そして地球温暖化による水温の上昇という難題も対策が必要だ。

 オーストラリア政府は、グレートバリアリーフの環境回復プログラムに6,000万豪ドル(約45億4千万円)の予算を設定し、これらの課題に当たるとしている。このうち約6分の1がオニヒトデ対策費用だ。

 グレートバリアリーフ全体の経済的価値は560億豪ドル(約4兆2,000億円)と試算されている。この環境の保全は、オーストラリアだけの問題ではない。ロボットと人工知能による、人類社会の問題解決への新しい1歩が始まろうとしている。(記事:詠一郎・記事一覧を見る

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