ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 運用に向けた最終テストに成功

2019年6月4日 20:55

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熱真空試験を実施するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の宇宙船部分 (c) Northrop Grumman

熱真空試験を実施するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の宇宙船部分 (c) Northrop Grumman[写真拡大]

 米航空宇宙局(NASA)は1日、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載される機器が宇宙空間で運用できるかの最終テストに実施し、成功したと発表した。

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■次世代型天体観測を可能にするジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、現在開発中の赤外線観測用宇宙望遠鏡である。ハッブル宇宙望遠鏡のように地球の周回軌道を飛行するのではなく、地球と月との重力で安定する高度約150万キロメートルの地点で運用される。

 宇宙望遠鏡のメリットは、大気によるゆらぎの影響を受けない点にある。地上に位置する天文台と比較し、宇宙望遠鏡は天体からのデータを鮮明に取得可能である。現在稼働中の宇宙望遠鏡には、NASAが運営するハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡等が存在する。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はその後継に位置づけられる。

 2021年まで運用予定のハッブル宇宙望遠鏡は、主に可視光線での観測を続ける。ところが遠方宇宙に存在する初期に誕生した天体が放つ光は、重力による赤方偏移により波長が変化するため、赤外線として観測される。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の目的は、これら宇宙で最初に誕生した天体の観測にある。

 このほかにもハビタブルゾーンをもつ太陽系外惑星観測にも活用される。太陽系外惑星を有する惑星系の形成を調べることで、われわれの住む太陽系の進化の解明が期待される。

■延期が繰り返されたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、幾度も打ち上げが延期された。最後の延期が発表されたのが2018年6月で、運用を検証する実験の際に発生したネジの脱落などにより、2019年から2021年3月へと延期された。

 今回、「熱真空試験」と呼ばれる宇宙の厳しい環境下で搭載機器に問題がないかを確認する実験が実施された。真空である宇宙空間は、太陽の熱放射によって寒暖の差が激しい厳しい環境だ。

 そのため真空状態を作り、マイナス148度から102度まで変化させ、機器に異常がないかを確認したという。実験は成功したため、地球から約150万キロメートル離れた地点での運用が可能なことが確認された。

■残るは最終的な組み立てと打ち上げ場所までの輸送

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、宇宙船に相当する部分と、望遠鏡などの観測装置とに分類される。いずれもすでに熱真空試験を合格し、残るは打ち上げ場所まで輸送できる状態にあるかの検証だけだという。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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