超新星ハンター板垣公一氏、2006ch発見から13年 超新星爆発の脅威とは

2019年5月16日 08:16

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西暦1054年に超新星爆発を起こした残骸「おうし座のかに星雲M1」(c) NASA

西暦1054年に超新星爆発を起こした残骸「おうし座のかに星雲M1」(c) NASA[写真拡大]

 今からちょうど13年前の2006年5月16日、国立天文台が、アマチュア天文家板垣公一氏による超新星発見のニュースを報じた。彼はペガサス座の銀河NGC7753のなかに、半年以上前には全く存在すら確認できなかった16等級に輝いている超新星を発見。「2006ch」と命名された。

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 超新星とは恒星(太陽のように自ら輝くことのできる星)が、自らの寿命の最期に起こす爆発で、新しい星の誕生を意味するのではない。ただし超新星爆発で一生を終えるのは、太陽の質量の10倍程度以上の大きな恒星に限られる。

 板垣氏は、2018年末時点で139個の超新星を発見している超人的記録保持者だが、よほどの天文マニアでない限り、彼の名を知る人はいない。しかしながら、世界の天文学者で構成される国際天文学連合からは、その偉業に敬意を表し、彼の発見した超新星に「ITGK 1」(「いたがき」をローマ字で略記したもの)のような独自の符号をつけようという動きもあるほどだ。

 彼が発見した超新星はいずれも地球から遠いため、超新星爆発による被害が地球に及ぶことはないが、実は人類滅亡をもたらす可能性を持った恐るべき存在であることはあまり知られていない。たとえば全天一明るい恒星で有名なシリウスは、地球から約8光年という比較的近い距離にある。もしシリウスが超新星爆発を起こしたとしたら、ガンマー線バーストによりオゾン層が破壊され、地上はあらゆる宇宙からの放射線にさらされることになり、ほとんどの生命体のDNAが破壊されつくしてしまう。

 いったん超新星爆発が起これば、現在の人類の科学力や技術力では滅亡を免れるすべはない。だが幸いにも、シリウスの質量は太陽の2倍程度で、超新星爆発を起こせるほどの規模ではない。地球からの距離が10パーセク(33光年)以内の比較的近い領域での超新星爆発は、過去には約2億4千万年ごとに起きている。そのたびごとにガンマー線バーストの影響で、オゾン層の多くが破壊され、大量絶滅が繰り返えされてきたのだ。

 宇宙は人間の想像をはるかに超えた大きさを持っている。そしてそこに発生する超新星の数は計り知れない。だがたとえ、超新星爆発が宇宙のどこかで起こったとしても、そのほとんどがはるかかなたの世界の出来事であり、人類滅亡の心配もない。仮にそんな危機が近所で起きたとしても2億4千万年年に1度であり、まだまだ私たちは楽観的に生きていくことを宇宙に許されているようだ。今日は偉大なる超新星ハンター板垣公一氏の名前を心に刻んでおくことにしよう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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