ロボットが宇宙で活躍へ NASA開発の「アストロビー」、ISSに搭乗へ

2019年4月27日 11:06

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Astrobee(アストロビー)(c) NASA/ Ames Research Center/ Dominic Hart

Astrobee(アストロビー)(c) NASA/ Ames Research Center/ Dominic Hart[写真拡大]

 宇宙開発の現場ではロボットの重要性が高い。ロボットを宇宙へ送るのは人間を送るのに比べてずっと簡単だ。ロボットは食べないし、寝ないし、トイレもいらない。一度行けばいつまでも現地で活動し続ける。人間が活動することのできない環境でデータを収集したり、サンプルを採集したりするためには、ロボットの能力を最大限に使うことが求められる。

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 火星探査ミッションでは、ソジャーナーやキュリオシティなどの4台のローバー(無人走行車)が大活躍した。このローバーは、NASAのJPL(ジェット推進研究所)が開発したロボット。次回の2020年に計画されている火星探査でも活躍が期待されている。

 宇宙で活躍するロボットはソジャーナーのようなロボットの他にも開発が進められている。NASAは、国際宇宙ステーション (ISS) に現在開発中の新型ロボットを派遣することを発表した。今回はこの新型ロボットを中心に、宇宙開発の現場で活躍が期待されるロボットについての情報を紹介する。

●無重力ユーティリティロボット、アストロビー

 今回、ISSへの使用開始が発表されたのは、ステーションでの様々な作業をサポートする多機能型ロボット、Astrobee(アストロビー)。一辺が30センチの立方体の形状を持つこのロボットは、作業用の腕とカメラを持ち、ステーション内の荷物の移動や作業状況の写真撮影などを行うことができる。

 ボディの全周に配置された12機のノズルから圧搾ガスを噴出して無重力のステーション内を移動することができ、ガスを噴出するノズルの開閉によって移動方向を変えることができるため、作業中でも向きを変えずに前後上下左右に移動することが可能だ。

 センサーとコンピューターが内蔵されているため、自律的な活動が可能で、カメラとセンサーから周囲の状況を読み取り、人間の宇宙飛行士と共同で作業を行うことができる。

 電源からの充電はドッキングステーションで行い、残量が少なくなれば自分でドッキングステーションに移動して充電する。作業する必要がないときは、アームで宇宙ステーション内につかまってエネルギー消費を抑えるようになっている。

 今回、ISSへの配備されるアストロビーはハニー、バンブルと名づけられた2台で、それぞれ青、黄に配色されている。2019年末までには3台目となる、緑色のクイーンが追加される予定だ。3台の名前はHoneybee(ミツバチ)、Bumblebee(マルハナバチ)、Queenbee(女王バチ)からとられている。

 3台は同調した作業が可能で、宇宙ステーション内の様々な活動のサポートとして活躍することが期待されている。ステーション内のペイロードの運搬や実験データの収集、取りまとめに力を発揮するだろう。アームでものを把持して位置を確定できるため、推進力やモーターの動力を使わずにカメラ撮影ができることも、より鮮明な画像を撮影する上で有効だ。

●続々と続く宇宙開発用ロボット

 NASAがMITおよびスタンフォード大学と共同で開発している「ヘッジホッグ」(はりねずみ)は、立方体の頂点から8つの角が突き出しているデザイン。小惑星や彗星のような小さな天体において探査することを目的に、設計されるロボットだ。

 転がるのではなく、表面を跳ねてとぶことで移動する。どちらの面が下になっても活動できるようになっており、岩の裂け目や穴に落ちたときには竜巻のように自分を回転させて空中に飛び出すことができる。

 折り紙に着想を得たという「パファー」は、二輪のローバーでダンベルのようなシンプルな形をしている。このロボットは柔軟性のある材料で作られており、ボディが畳み込まれて2つのホイールが水平に倒れるように変形する。

 平たい形のため、岩の隙間などの狭いところにも入り込むことができる。手のひらサイズの小型ロボットなので、従来のローバーでは進めなかった砂漠やクレーターの坂を上り下りすることができるだろう。

 氷面下探査ローバー「BRUIE」は、氷で覆われている星の探査を行うことを想定して開発されたロボットだ。氷の下の水中に入って水に浮き、移動しながら水中の探査を行うことができる。木星の衛星エウロパや土星の衛星エンセラドスはこのような氷の星であることが分かっている。遠くない将来に出番があるだろう。

 前述のハニーとバンブルは、4月中に最終チェックを終え、実装の準備にかかる予定だ。2体は輸送用宇宙船キグナスでISSへ運ばれる。すでにアストロビー用のドックが日本の探査モジュールに設置されている。宇宙飛行士はセットアップするだけで2体は自動的にISSの中を飛び回り始めるはずだ。

 人とロボットが協調して、新世界を開拓していく。そんな時代はもう夢物語ではない。(記事:詠一郎・記事一覧を見る

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