火星の衛星による部分日食撮影した連続画像 衛星軌道の理解深まる NASA

2019年4月7日 11:26

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火星の衛星「フォボス」による部分日食 (c) NASA/JPL-Caltech/MSSS

火星の衛星「フォボス」による部分日食 (c) NASA/JPL-Caltech/MSSS[写真拡大]

 米航空宇宙局(NASA)は5日、火星探査車キュリオシティから撮影した衛星による部分日食の連続画像を公開した。火星の衛星フォボスが太陽を横切る様子が写されている。

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■火星を走行する探査車「キュリオシティ」

 2012年に火星に到達したキュリオシティは、走行しながら惑星の探査を続けている。「Mastcam」と呼ばれるカメラを搭載し、太陽を直接観測できる。キュリオシティは、数週間にわたって、衛星のフォボスとダイモスによって引き起こされる部分日食の様子を撮影し続けた。

 火星の第1衛星であるフォボスは半径約11キロメートルの大きさで、火星にもっとも近い6,000キロメートル以内の軌道を公転している。他方第2衛星であるダイモスは、半径が約6キロメートルで、フォボスの外側約2万5,000キロメートルの軌道を公転する。

 フォボスは3月26日に、ダイモスは3月17日に撮影が実施された。フォボスによる部分日食は、地球上での金環日食と同様に、太陽がフォボスの影をすっぽりと覆う。他方ダイモスは、太陽面と比較して小さいため、太陽を横切ったようにしか観測されない。

■部分日食が惑星軌道の理解に役立つ

 過去キュリオシティやほかの火星探査車によって、部分日食が多数観測されている。「スピリット」や「オポチュニティー」等の探査車が2004年に火星に到達する前は、各衛星の軌道に不確実な点が数多くあったという。初めてダイモスによる部分日食をとらえたとき、ダイモスは予想された地点よりも40キロメートルも離れた場所を通過したことが判明した。

 火星だけでなく木星やほかの衛星からの重力の影響で、衛星の軌道が変化する。部分日食を観測することで、火星の周囲を公転する衛星の軌道の理解に役立つというのだ。

 火星探査車により、これまでフォボスによる蝕現象が40回ほど観測されたが、なお火星の衛星の軌道には不確実な部分が存在するという。「長期間にわたって部分日食を多く観測することで、各軌道を詳細に説明できるようになるだろう」と、Mastcamを活用して共同研究を行うテキサスA&M大学のマーク・レモン氏は語っている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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