大気汚染が原因の死亡者数、喫煙が原因を上回る ドイツの研究

2019年3月15日 11:41

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●10万人当たり120人が大気汚染で死亡

 ドイツのマインツ大学の研究によれば、大気汚染による死者の数は全世界で年間880万に及ぶことが判明した。これは、10万人当たり120人が大気汚染によって死亡している計算になる。研究を実施したマインツ大学のトマス・ムンツェル教授は、この数字はこれまでの推定の2倍当たると語った。また、喫煙が原因の死亡者数は全世界で年間720万人と推定されているため、大気汚染による死者はこれを上回ることとなった。

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●大気汚染は避けることができないという危険性

 大気汚染を原因とする疾病については、呼吸器系の疾患よりも血管疾患が多いことが顕著になっている。

 ムンツェル教授が特に強調するのは、たばこならば本人の意思で喫煙を中止することも可能であるが、大気汚染については避けようがないという点である。

 医学誌『ヨーロピアン・ハート・ジャーナル』に掲載された研究内容は、ヨーロッパの国々が調査の対象になっている。10万人当たりの大気汚染による死亡者数は、ドイツで154人、イタリアで136人、ポーランドで150人、イギリスで98人、フランスでは105人と報告された。

●予想以上の速さで進む大気汚染

 世界保健機関(WHO)によれば、大気汚染による死者は5秒に1人という危機的な状況を呈している。さらに、世界中の92%の人が限界値を超える汚染された空気を吸っているという結果も出ている。

 また、欧州環境期間(EEA)の調査では、大気汚染によって年間50万人が死期を早めているという。

 マインツ大学の調査では、大気汚染を原因とする疾病の第1位は心血管疾患であったが、そのほかにも喘息、肺がん、記憶力の悪化など、さまざまな症状とスモッグとの関連が否定できない。当然、人類の生活の質は大気汚染によって低下しているといえる。

 大気汚染はさらに、気候の変動にも大きな影響を与え続けている。2030年以降、熱波や広がる砂漠化、洪水などによって年間25万人の命が危険にさらされるという推測もある。

 予想以上の速さで進む大気汚染や地球の温暖化に対しては、国際的なレベルでの対策が必要とされる時代になったといえる。

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