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「黄金株」を考える

2019年3月4日 11:48

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 企業は2002年4月の商法改正で「種類株」の一つとして、「黄金(おうごん)株」が発行できるようになった。種類株でよく知られるところでは「優先株(配当を優先的に受け取れる代わりに議決権が劣後する)」があるが、黄金株とはどんな株式か。

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 一般的にはこう説明される。黄金株は1株発行され「株主総会や取締役会の決議を拒否することができる」、あるいは「発行済み株式の50%以上、3分の2を保有する大株主が提案し議決された事項でも拒否権が発動できる」。

 目下、上場企業で黄金株を発行しているのは唯1社。石油開発帝石だけである。発行済みの黄金株の保有者は、経済産業大臣。石油開発帝石のIR担当者に聞いた。

 Q:黄金株の保有者が決議に対して、拒否権を発動したことはあるのか。
 A:ない。

 Q:ではなぜ黄金株を発行したのか。
 A:例えばメジャー級の資源開発会社が株式市場等を介するなどして当社の株を保有し、大株主となり当社の目指す方向性や施策を阻むような提案・議決をした場合に「独立性」を維持するために発行した。

 詳細はここでは省くが同社はいま資源開発、とりわけLNG開発で「準メジャー」格に位置している。「エネルギー確保」という国策の基、国際石油開発帝石と国が共通利害にもとづいて発行・引き受けたという次第だ。ただ東証・大証を傘下にもつ日本取引所グループは「株主の不平等を引き起こしかねない」と「望ましくない」という姿勢を示している。

 だがここにきて非上場企業の間で、黄金株発行が俄かに注目を集め始めている。周知の通り戦後に創業し、それなりの存在になった中小企業が世代交代の時期を迎えている。創業者は段階的に相続税等を視野に入れつつ、保有株を後継者の保有に切り替えてきている。が、創業者にはそうする一方で、「経営の先行きに不安が生じるような状況」に懸念を捨てきれないでいるケースも少なくない。「自分の目が黒いうちはまだしも」と考える創業者は「メインバンクに経営のお目付け役を頼みたい」と、黄金株の発行・保有を打診する動きがある。

 また証券筋の間からは日本取引所の姿勢とは裏腹に、「LIXILグループの様な企業には黄金株の発行がふさわしい」といった類の声が聞かれる。LIXILは今年の株主総会で三顧の礼で迎えたプロ経営者3人目の瀬戸欣也氏を退陣させる計画だ。そして3人のプロ経営者を迎えた取締役会議長の潮田洋一郎氏がCEOの座に就く方向で、事態が進められている。

 かつて財経新聞でLIXILの実質上の創業者である故潮田健次郎があの世から、「3人目のプロ経営者を馘首する長男をどんな思いで見つめているか」なる拙稿を記したことがある。洋一郎氏に恨みがあるわけではない。だが1度は平取締役に降格させた洋一郎氏を「親なのだろうね。また引き上げてしまった」と悔いる口調の言葉を健次郎氏から耳にしたことがある。健次郎氏も執念の人。あの世とやらからメインバンクの三井住友銀行、三菱UFJ銀行に向かい「黄金株を発行させ引き受けて欲しい」と大声で叫んでいるかもしれない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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