【コストカッター、カルロス・ゴーン(4)】「再生社長」は再生できると「商売人」と交代するもの

2018年11月25日 16:23

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■「再生社長」は再生できると「商売人社長」と交代する

 V字回復を果たし、業績が安定してくると、次は「新製品開発・新製造技術開発・新生産技術開発」に進むこととなる。そこには作業現場のモチベ―ションコントロールなどの技術が必要である。

【前回は】【コストカッター、カルロス・ゴーン(3)】ゴーンの取った方策はタイムリーだった

 しかし、日産が、「検査不正」など「品質保証」に問題を起こしている状況を見ると、ゴーンの苦手な部分であることが見えてくる。強引なコストカットもやむを得ない状況で、それを実施した社長は、株主などからは評価されるが、社員は傷ついている。そこに続けて商売に打って出ても、社員に恨まれており素直には進めないものだ。

 常識的な基準で見ると、「再生請負人」と「商売人」は別の才能だ。そのため企業再生の常識では、【「再生社長」は再生できると「商売人社長」と交代する】ものだ。これは合理的と言わざるを得ないが、それはゴーンの失敗を考えれば余計に納得がいく。コストカットは、「他人の立場を顧みないサイコパス」が能力を発揮する。しかし、商売は、社員と共に努力していく姿を見せなければモチベーションが上がらない。品質保証体制において、社員は経営者の姿勢を見て仕事に取り組む姿勢を変えるのだ。

■カルロス・ゴーンの長所と短所

 公私混同の様子を見ると、ゴーンには「他人の立場を思いやる能力」が不足しているのであろう。欠落に近い状態であろうか?それが「コストカット」には有益だが、「商売」には不向きだ。社員の先頭に立って「汗をかいている姿」を見せないと、真剣に作業に取り組む社員が出てこない。これは、アメリカ流経営者では出来ないことだ。出来ていてもそれはうまくいっている時だけで、利益が上がらなくなったら「切り捨てる」つもりのファンド的経営姿勢では、品質保証体制を現場の社員全体で真剣に保ち続けることが難しくなる。

 日本製品の「高品質」は、経営者もそこそこの給料で、一緒に汗をかいている姿勢で出来ることだ。欧米式の経営であると、企業も社員も「使い捨て」方式でないと持続が出来ないので、品質を高く保つことは難しい。現在、問題になっている日本企業の品質不良は、欧米式経営の日本社会全体への広がりと見える。それは、「マネーゲーム」寄りになっている企業経営の在り方がそうしているのだと思えてならない。

 次は、これからの3社連合についてみてみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: 【コストカッター、カルロス・ゴーン(5)】 独自技術開発を縮小した功罪

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