「空飛ぶ車」の開発に向けた動きが本格化へ どんな車が空を飛ぶ?

2018年10月25日 13:50

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どのような“空飛ぶ車”が誕生するだろうか。

どのような“空飛ぶ車”が誕生するだろうか。[写真拡大]

 7月2日の記者会見で、菅義偉官房長官が「空飛ぶ車」に言及したことから、関連する動きが活発化してきた。菅長官は「新たなプレーヤーの参入を促し、年内に経済産業省と国土交通省が、官民協議会を立ち上げて工程表を策定する」ことを表明した。

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 「空飛ぶ車」と表記されていると、どうしても現在の自動車に翼かプロペラが付いた連想にとらわれてしまうが、様々なイメージ画像を見てみると「走ることには得意でなさそうな“大きなドローン”」が近い。

 空飛ぶ車の明確な定義は策定されてはいない。『電動』で『自動』の『垂直に離着陸するもの』という言葉に収斂されつつあることを考えると、“プライベートにも使えそうな小型有人飛行体”だろう。空を飛ぶという特異な能力を持つため、都市部における渋滞対策や、道路が寸断したり水没したために孤立化した地域の災害時の支援・救助活動、道路未整備の地域の観光促進、過疎地の交通弱者への移動手段提供など、活用される場面は色々考えられる。

 先行しているところでは、配車サービスの雄である米ウーバーテクノロジーズが「空飛ぶタクシー」の実用化を検討中と伝えられている。欧州のエアバスが4人乗りの機体を23年に実用化する計画がある。独ボロコプターは独ダイムラーや米インテルから出資を受け、都市の中心と30㎞程度の最寄りの空港を結ぶ交通手段として開発を進めている。ヤマトホールディングスに至っては、米ベル・ヘリコプターと共同した無人輸送機の開発計画を発表している。昨今の人手不足も勘案して、空飛ぶ車を超えた「空飛ぶトラック」というところだ。19年8月までの試験飛行を目指しているという。

 8月29日には、空飛ぶクルマの実現を目指す「空の移動革命に向けた官民協議会」が初会合を開催し、20以上の企業・団体の関係者約150人が集結した。20年代の実用化を意識して、車体の構造の検討や軽量化、安全性を確保する技術開発を織り込んだロードマップを年内に策定する。

 日本ではまだ認識の共有が進んでいない空飛ぶ車だが、海外では上記のように航空機メーカーやヘリコプターメーカーがプランの具体化を進めている。既に飛行体として先行しているドローンの進化系として考えると、中国の動向も気になるところだ。例えば、ドローンの運行管理システムを洗練させて行けば、空飛ぶ車の技術基盤の一部を構成することは十分考えられる。空飛ぶ車では世界の趨勢から取り残されることがないように官民の適切な連携を望みたいものである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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