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アメリカがEVへの動きに水を差す! EVはこれからどうなる? (後編)
アメリカが自動車の燃費規制を緩和することを決定した場合には、アメリカでEVを売ることは難しくなる。DOTとEPAの試算にもあるように、HEVの普及率が12年後にも3%台に止まるということは、アメリカではHEVはへそ曲がりの変わり者が乗る特殊な嗜好品と扱われる恐れがある。つまりEVへの急傾斜がバブルのように弾ける可能性すら論じられ始めた。もちろんまだ決定した訳ではない。カリフォルニア州などの反発も強く、裁判所を巻き込んだつばぜり合いが続くと思われ、アメリカ政府が目指している今冬の決定は難しいと見られている。そして長引けば長引くほどメーカーの対応は困難になる。
【前編は】アメリカがEVへの動きに水を差す! EVはこれからどうなる?(前編)
何しろ、EVは航続距離が短くて、充電時間が長く、高価で重いというリチウムイオンバッテリーの呪縛から解放されていない。代替バッテリーと目されている新技術も、5~10年後には実用化されるかも知れないという甚だ頼りない段階にある。一気にブレイクスルーが進む期待はあるにしても、実務的に見通しを計算できる状況にはない。
ディーゼルエンジンの排ガス不正事件を起こして、世界がEV化へなだれ込むきっかけを作ったドイツのメーカーはしたたかで、今もディーゼルエンジンを捨てていない。ドイツのメーカーはEV化への進展スピードが加速することについては懐疑的で、EVへのシフトが想定通りに進まない場合の保険として、ディーゼルエンジンを温存しようとしている。
テスラのCEOであるイーロン・マスク氏が株式の非公開化発言で物議を醸したのは燃費規制の緩和が発表された直後だった。ZEV規制が撤廃されることになるとテスラへの影響は甚大だと見られている。今までの急激とも言える成長カーブが逆方向に向かう可能性を懸念するあまり、「株式の非公開化」をツイートしてしまったかも知れない。このつぶやきがアメリカ証券取引委員会(SEC)の調査対象となり、イーロン・マスク氏は会長職の辞任と2000万ドル(約22億7800万円)の支払いをするまでに追い込まれた。
アメリカ自動車工業会(AAM)はアメリカを代表する自動車工業会で、アメリカ国内メーカーはもちろん、国外メーカーのフォルクスワーゲンやトヨタも正会員に名を連ね、BMWやマツダは準会員である。そのAAMは規制に対応するための開発コストが不要となり業績を押し上げる効果があるとして、トランプ政権の提案に賛成している。
アメリカ政府がEVの普及を阻む法案を進めようとしている現状は、今後の見通しをより一層不透明にした。果たしてEVの時代が来るのか、アメリカの横車で白紙に戻るのか。新しいバッテリーの開発よりも深刻で困難な展開が予想される情勢となって来た。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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