ガンマ線天体を観測する次世代望遠鏡1号基がスペインで完成 東大らが参加

2018年10月16日 18:12

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ラパルマ島に完成したCTA望遠鏡1号基(写真:東京大宇宙線研究所の発表資料より)

ラパルマ島に完成したCTA望遠鏡1号基(写真:東京大宇宙線研究所の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学宇宙線研究所は10日、次世代望遠鏡CTA大口径望遠鏡の1号基がスペインのラ・パルマ島に完成し、記念式典が行われたことを発表した。式典終了後には、試験運転が開始された。

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■日本やヨーロッパが参加するCTA計画

 チェレンコフ・テレスコープ・アレイ(CTA)計画は、日本やヨーロッパなどが参加する国際共同研究プロジェクトだ。100台近くの望遠鏡を敷き詰めたガンマ線天文台を南半球のチリと、北半球のスペインに建設する計画である。これにより、現在の望遠鏡の10倍深い感度を達成できるという。

 計画には、世界31カ国1,400名以上の研究者が参加しており、日本でもCTA-Japanコンソーシアムが結成され、東京大学の他、京都大学や大阪大学、早稲田大学、高エネルギー加速器研究機構、理化学研究所などから127名が参加している。 

 CTA望遠鏡が観測するのは、宇宙から降り注がれる「チェレンコフ光」と呼ばれる愛白い光だ。高エネルギーの荷電粒子が水などの透明物質を通過する際、荷電粒子と物質との相互作用により、エネルギーが高い状態になる。荷電粒子が通り過ぎる際に放出するエネルギーが、可視光として放出される。このチェレンコフ光の観測により、ガンマ線天体の謎を解き明かそうとしている。

■ガンマ線天文学により明らかになる宇宙の謎

 ガンマ線天文学では、電磁波のなかでもっとも高いエネルギー領域で宇宙を観測する。ガンマ線を放出する天体には、「ガンマ線バースト」と呼ばれる爆発現象や、超新星爆発後に発生する超新星残骸、ふつうの銀河よりも明るく輝くブレイザーや暗黒物質(ダークマター)など数多く存在する。

 CTA望遠鏡が観測するのは、宇宙から降り注がれる「チェレンコフ光」と呼ばれる愛白い光だ。高エネルギーの荷電粒子が水などの透明物質を通過する際、荷電粒子と物質との相互作用により、エネルギーが高い状態になる。荷電粒子が通り過ぎる際に放出するエネルギーが、可視光として放出される。このチェレンコフ光の観測により、ガンマ線天体の謎を解き明かそうとしている。

■CTA大口径1号基がガンマ線天文学の発展に寄与

 CTA大口径1号基はCTA計画で実用化される最初の望遠鏡だ。建設は北大西洋上の島であるスペイン領カナリア諸島にて、2015年10月から始まった。9月下旬に鏡を反射したチェレンコフ光を捉える高性能カメラも設置されたという。

 CTA計画には、アメリカも合流の公算が高まっている。CTA計画が実現すれば、1000以上のTeVガンマ線天体の発見が期待され、高エネルギー宇宙物理学の発展に寄与することになる。

 CTA大口径1号基は、来年4月の本格稼働を目指しているという。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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