連星「りゅうこつ座エータ星」新種の宇宙線源と判明 粒子加速の物理機構に光明

2018年7月14日 21:26

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「りゅうこつ座エータ星」可視光 ハッブル宇宙望遠鏡(NASA提供、広島大学の発表資料より)

「りゅうこつ座エータ星」可視光 ハッブル宇宙望遠鏡(NASA提供、広島大学の発表資料より)[写真拡大]

 銀河系で最大級の質量を誇る連星「りゅうこつ座エータ星」において、連星間の星風の粒子の一部がほぼ光速にまで加速された「超高エネルギー粒子」となっていたことが明らかになった。このことは「りゅうこつ座エータ星」が宇宙線の発生源であることを示している。

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 今回研究を行った広島大学大学院理学研究科高橋弘充助教、アメリカNASAゴダード宇宙飛行センター濱口健二研究員ら、日本とアメリカ他による国際共同研究グループは、4年にわたり連星「りゅうこつ座エータ星」を複数回観測。硬X線を集光できる望遠鏡を世界で初めて搭載したNuSTAR衛星を使い、超高エネルギー粒子が発する硬X線が「りゅうこつ座エータ星」から来ていることを高精度で突き止めた。

 濱口氏らのグループは8年前にフェルミ・ガンマ線衛星のデータ解析を行い「りゅうこつ座エータ星」付近からのガンマ線放射を確認していた。ガンマ線の放射には光速まで加速された超高エネルギー粒子が必要となるが、こうした超高エネルギー粒子はブラックホールなどの高エネルギー天体で作り出されるものとされていた。そのため「りゅうこつ座エータ星」のような普通の星で超高エネルギー粒子が作り出されるほどの激しい活動が行われているとは考えられていなかった。またフェルミ衛星の解析では、その精度の低さからガンマ線の発生源が「りゅうこつ座エータ星」であるのか、はたまた別の高エネルギー天体であるのかの特定には至っていなかった。

 宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線は、飛行機のパイロットや宇宙飛行士の被ばくの原因、雲の発生要因であるとともにDNAの損傷による生物の進化に寄与した可能性も指摘され、その発生源や発生要因を探ることは宇宙物理学のみならず生物学等においても重要な問題の一つとして考えられている。この先「りゅうこつ座エータ星」や同じような連星を観測し続けることで、恒星の粒子加速の仕組みやその発生量などの解明が進むと期待されている。(記事:秦・記事一覧を見る

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