北海道大学など、琉球列島下地島の海底洞窟で新種の甲殻類を発見

2018年5月27日 21:48

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新属新種シモジチヂミアナイスの背面写真(A)と左側面写真(B)。(画像:北海道大学発表資料より)

新属新種シモジチヂミアナイスの背面写真(A)と左側面写真(B)。(画像:北海道大学発表資料より)[写真拡大]

 北海道大学大学院理学研究院の角井敬知講師、沖縄県立芸術大学の藤田喜久准教授らの研究グループは、琉球列島に属する沖縄県宮古島市・下地(しもじ)島の海底洞窟から、タナイス目甲殻類の新属新種を発見した。

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 タナイス目は、フクロエビ上目に含まれる甲殻類の分類の一つである。鋏を持つのが特徴であり、900種以上が存在し、世界に広く分布するが、ほとんどの種が小型で、海底に暮らす。

 海底に生息するというその生態のため、食用・その他の利用・絶滅危惧の問題などまでも含め、人間との接点はほぼない。

 さて、海底洞窟についてである。海水面下に入り口を持つ海底洞窟は、未知の深海生物や特殊な分布を持つ生物など、多くの新種が存在する、生物学者にとっては興味深い場所として知られている。

 しかし、ちょっと考えていただければお分かりの通り、その探査には様々な困難が付きまとい、特別な潜水技術、器具の問題などから、日本近海においてすら、その研究はあまり進んでいない。貝類についての研究が多少ポピュラーに行われている程度であるという。

 だが、琉球列島の海底洞窟の研究を、現在沖縄県立芸術大学の藤田喜久准教授らの研究チームが進めている。これまでにも既にエビやカニなどの新種、稀少種を発見している。

 今回の研究では、下地島の水深35メートルに入り口を持つ海底洞窟での生物調査を行ったところ、水深18メートルの付近で採取された底質サンプルの中から、日本近海では初の発見となる海底洞窟性タナイス目甲殻類が発見された。詳しくその形態を調査した結果、既存のいかなるタナイス目甲殻類とも異なる特徴を持つものであったことから、新属新種として報告された。和名はシモジチヂミアナイス、学名はHaimormus shimojiensis(ハイモルムス・シモジエンシス)である。

 なお、研究の詳細は、生物学・医学・環境科学の総合誌「PeerJ」に公表されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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