来期新卒採用、売り手市場続くも金融業では抑え目 リクルートワークス調査

2017年12月21日 01:07

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 リクルートワークス研究所の調査によると、来年度以降も新規卒業者の採用に意欲的な企業が多いことが分かった。ただし銀行や地方金融機関などの一部で採用を抑制する傾向も明らかとなった。

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■来年も大学新卒の売り手市場が拡大

 18日、人と組織の「新しいコンセプト」を提起する研究機関、リクルートワークス研究所が「ワークス採用見通し調査」を発表した。

 これは、2019年の高校、大学、大学院を卒業する学生を対象とした採用見通しに関するもので、民間企業4,669社から得られた回答を集計・分析している。2019年新卒者の採用見通しは、大学生・大学院生について「増える」と回答した企業の割合は15.8%(2018年:13.5%)、「減る」は5.1%(同5.7%)となっており、企業側の採用に対する意欲が感じられる結果となった。

 また「わからない」と答えた割合は19.5%(同20.7%)と減っており、資料では「長期的には低下傾向にあるものの、一定の割合を占めている」としているものの、採用時期を前倒しする可能性もありそうだ。

■銀行や地方金融機関では絞り込みの傾向

 従業員規模では、いずれの階層でも「増える」を「減る」が上回っている。特に5,000人以上の企業(267社)では、増える(19.5%)が減る(4.1%)を15.4%も上回った。

 大枠の業種別で「増える」と「減る」の差を見ると、流通業(+13.2%)、建設業(+11.9%)、製造業(+10.9%)、サービス・情報業(+9.8%)、金融業(+3.2%)の順。

 さらに細かい業種別では、サービス・情報業の飲食サービス業(+24.7%)、教育・学習支援(+16.9%)、製造業の半導体・電子・電気部品(+20.5%)、コンピュータ・通信機器・OA機器関連(+20.0%)などの分野で「増える」が「減る」を大きく上回っている。

 一方、サービス・情報業の電気・ガス・熱供給・水道業(-2.6%)が唯一のマイマスとなった他、金融業の労働金庫・信用金庫・信用組合(+1.4%)、銀行(+3.5%)、サービス・情報業の医療・福祉(+3.3%)などの分野で「増える」と「減る」との差が小さい。

 大手メガバンクの従業員削減や地方金融機関の苦境は既にニュースとなっており、それを裏付けた結果となった。

■高校新卒は微妙な結果に

 高校生については「増える」と答えた企業の割合が10.0%(2018年:8.3%)と増えた点では大卒者と同様だった。

 ただし「減る」が3.3%(同2.9%)と微増したとともに、「以前も今後も採用しない」も34.9%(同34.0%)と、わずかに増えている。高校新卒の採用から、大学新卒や中途採用、派遣採用などへの移行があるのかもしれない。

■高卒者も大卒者と同様の傾向

 従業員数別や業種別の高卒者採用も、大卒者とほぼ同じ傾向となっている。

 その中でも顕著なのは金融業の結果で、金融業全体でも「増える」(2.9%)と「減る」(3.6%)の差が-0.7%とマイナスになるとともに、小分類では、証券(+2.6%)のみがプラスで、銀行(-1.8%)、労働金庫・信用金庫・信用組合(-2.0%)がマイナスだ。

 「安定」イメージの強い金融機関だったが、そんなイメージは昔のものになりそうだ。

■人手不足対策の給与改善と外国人採用

 新卒者確保を目的とした初任給の引き上げでは、「既に取り組んでいる」「今後取り組む予定」の企業が建設業では半数を超え、製造業や流通業でも4割を超えている。また外国籍学生の採用でも、大企業を中心に、製造業、建設業、サービス・情報業などで意欲的な企業が多い。

 こうした対策により、人手不足がどこまで埋められるかは不透明で、単に売り手市場としても、企業、学生ともに変動には備える必要がありそうだ。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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