期待される老後の理想形 地域包括ケア

2017年10月26日 15:47

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 統計はない。だが定年を間近に控えた人々の多くが「老後は仮に要支援・要介護状態になっても施設や病院でなく、住み慣れた自宅で送りたい」と言う。70歳に手が届こうという私も同感である。為政者も財政的な問題を背景に、「施設型介護・医療」から「在宅型介護」の移行に舵を切っている。そのことが表面化したのは2005年の介護保険法改正だった。「地域包括ケアシステムの構築を25年までに目指す」と公にした。

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 地域包括ケアシステムとは、こう理解すればよい。『専門的なサービスである「介護」「医療」「予防」とその前提になる「住まい支援」「生活支援」が一体的に連携し、地域ごとに切れ目のない在宅生活をケアする。従い介護報酬も介護分野だけで決めるのではなく、医療等との連携強化を前提に進めていく』。来年度は「介護報酬」「診療報酬」のダブル改定が予定されている。25年に向けた着実な制度改革の積み重ねが、地域包括ケアシステムという老後の「理想形」構築の大前提になる。果たして間に合うのか。

 3年に1度見直される介護保険制度、5年に1度見直される介護報酬制度が同時にそのタイミングを迎えた15年の見直しの骨子は以下の様なものだった。

【介護保険制度】
(1)低所得者(住民税非課税世帯)の介護保険料の低減拡大(低減割合を現行の5割から17年4月以降は7割とする)。その代わり利用者の自己負担分を一律1割から、一定以上の所得(単身で年金収入が280万円以上)がある人は15年4月から2割とする。

(2)特養老人ホームへの新たな入居者については、原則として要介護度3以上とする。低介護度の人達については、在宅介護サービスを中心とする。

【介護報酬】
(3)中重度介護者や認知症高齢者への対応をさらに強化する。そうした人達の「住み慣れた地域で」という意向に沿うために、介護報酬を増額する。

(4)今回の改定で大方の介護サービスに対する報酬は下がる。だが介護職者確保=給与増対策として、「介護職員処遇改善加算」制を導入する。

 理想形実現に「道半ば」であり、「どこを納得ラインとするか」のコンセンサスが求められることも分かる。が例えば「(2)」の結果、特養に空室が目立ち始めているという事実がある。それにどう今後対応していくかなど、課題が多いのも事実である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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