【小倉正男の経済羅針盤】ひとつの時代の終焉=米国の利上げと中国の低迷

2016年1月20日 10:36

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

アメリカは、昨年12月に利上げを行うことを決定した。アメリカが利上げをするのは9年半ぶりということである。

アメリカは、昨年12月に利上げを行うことを決定した。アメリカが利上げをするのは9年半ぶりということである。[写真拡大]

■アメリカの利上げは意味のない「勝利」にならないか

 アメリカは、昨年12月に利上げを行うことを決定した。アメリカが利上げをするのは9年半ぶりということである。

 アメリカ経済は、利上げを行うのだから、良い状態にあるのは確かなのだろう。

 しかし、中国、欧州、中東と世界経済が思わしくない状態にあるのに、アメリカだけが正常化=利上げを行うというのが「正常」なことだったのだろうか。

 アメリカが利上げを行えば、世界中のおカネがアメリカに集まってくる。ドルが強くなるのだから、それだけでおカネがアメリカを目指すことになる。世界のおカネの流れが大きく変化する。

 アメリカ経済の一人勝ち体制に入るわけだが、それが世界経済に「変調」を来たすとすれば、意味のない「勝利」になるのではないか。全体が窮乏化するなかで、一国だけが繁栄を続けることはできないからだ。

■中国経済の本当の「サーキットブレーカー」はアメリカの金利動向

 問題は、中国経済の低迷だ。高度成長から「新常態=ニューノーマル」にするというのだが、これも「正常」に復するとしている。

 中国経済が低迷すれば、それだけでおカネは中国から出ていくことになる。人民元安、つまり元は安くなる。元が安くなるとすれば、さらにおカネは逃げることになる。

 アメリカの利上げは、元を売って、ドルを買う動きを加速化する――。

 昨年来、アメリカが利上げをする素振りを見せると、中国の株価が大きく下がるという現象が繰り返されてきた。アメリカが、利上げの機運を後退させると、中国株式市場の低落が収まるといった具合だった。

 中国経済の安定は、小手先のテクニカルな「サーキットブレーカー制度」ではまったく間に合わない・・・。中国経済の本当の「サーキットブレーカー」(遮断器)は、アメリカの利上げ見送りだったのではないか。

■アメリカの利上げは短命になるのではないか

 中国経済の低迷が加速化すれば、原油価格は大きく低下する。中国経済の低迷は、「石油ガブ飲み」ではなくなるということになる。中国経済の低迷は、原油のみならず、資源という資源の需給に影響を与えている。

 原油価格の低下は、アメリカにハネ返っている。アメリカは、シェールオイルによって世界最大の産油国になっている。原油価格の低迷は、シェールオイル関連のジャンク債暴落を呼んでいる。

 アメリカの足元にも火の手が上がっている。そうしてみると、アメリカの利上げは短命になるのではないか、ということになる。

 中国経済の成長は、技術とおカネは外資に依存する格好で成し遂げられた。しかし、元手である労働力は、そう安いものではなくなっている。いまの世界的な株式市場の極端な混迷は、ひとつの時代の区切りを現わしていることだけはまぎれもない。

 ひとつの時代の終わりは、また新しい時代の始まりである。苦難は苦難だろうが、受け入れて始めるしかない。ただ、それだけ、それがいまということになる・・・。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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