人工衛星「ひので」「IRIS」で、太陽コロナ加熱メカニズムの証拠を観測

2015年8月27日 18:10

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(左)NASAの太陽観測衛星SDOが極端紫外光でとらえた太陽全面画像。(右)太陽観測衛星ひのでが可視光で撮影した太陽プロミネンス。(国立天文台の発表資料より)

(左)NASAの太陽観測衛星SDOが極端紫外光でとらえた太陽全面画像。(右)太陽観測衛星ひのでが可視光で撮影した太陽プロミネンス。(国立天文台の発表資料より)[写真拡大]

 国立天文台などは、太陽観測衛星「ひので」などを用いた研究によって、太陽大気コロナの高温が維持される謎を解決する糸口となる、波のエネルギーが熱エネルギーに変換される過程を捉えることに成功した。

 太陽表面は6,000度程度であるのに対して太陽大気コロナは約100万度の高温ガスから構成されているが、どのようなメカニズムによってコロナの高温が維持されているのかは明らかになっていない。この謎は「コロナ加熱問題」と呼ばれており、長年研究者を悩ませ続けている。

 2006年に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」による研究で、磁力線が振動している様子が捉えられたが、波動はただ存在するだけではコロナを加熱できないため。JAXAの岡本丈典と国立天文台のパトリックアントリンなどによる国際研究チームは、波のエネルギーが熱エネルギーに変換する過程を解明することにチャレンジした。

 まず、「ひので」と「IRIS」両衛星による共同観測を実施し、コロナ中に浮かぶプロミネンスのデータを取得し、「ひので」が観測していた低温のプロミネンスが時間経過とともに消失する際、「IRIS」によって高温成分の出現が捉えられ、プロミネンスの温度が1万度から少なくとも10万度へ上がる様子が明らかになった。また、「ひので」が観測したプロミネンスを構成する磁力線の上下振動と、その振動箇所での「IRIS」による奥行き方向の運動を比較すると、通常想定される振動パターンとは異なっていることが分かった。

 研究チームは、この特異な動きの原因を明らかにするため、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイ」を用いて数値シミュレーションを行った。その結果、プロミネンスが振動すると、プロミネンスが最も振れた位置で、プロミネンス表面の動きが最大速度を持つという観測された特徴を再現することに成功した。また、プロミネンスの上下振動と表面の運動は乱流を生じさせること、この乱流の存在が磁束管表面に生じる運動領域を「IRIS」で観測されうるサイズにまで拡大させていることを突き止めた。

 今後は、本研究成果によって、波動によるコロナ加熱問題解明へと弾みが付くと期待されている。論文タイトルは、「Resonant Absorption of Transverse Oscillations and Associated Heating in a Solar Prominence. I. Observational Aspects」と「Resonant Absorption of Transverse Oscillations and Associated Heating in a Solar Prominence. II. Numerical Aspects」。

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