ホンダ迷走を最上級セダン「レジェンド」発売再延期とN-BOX SLASHが象徴する

2014年12月31日 11:53

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記事提供元:エコノミックニュース

安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ・センシング)」を搭載してテストするレジェンド

安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ・センシング)」を搭載してテストするレジェンド[写真拡大]

 ホンダが11月10日に静か(密か)に発表したプレスリリースとN-BOX SLASH発売に今期の同社迷走ぶりが収斂しているように思える。

 過日、10年ぶり同社の最上級セダンであるレジェンドを大きく刷新して投入すると発表した。発売日は2015年1月22日としていた。が、これを1カ月遅らせ、「2015年2月20日(金)に発売します」とした。ひっそりとした変更である。実は、レジェンド発売日の延期はこれが2度目。当初、2014年12月15日の予定だったが、11月10日の発表会直前に2015年1月22日に延期することを決めている。その理由についてホンダは、「新技術搭載に伴い、さらなる総合品質検証、熟成の観点から」と説明していた。伊東孝紳社長もレジェンドの発表会見で「完全なクルマをお客様に渡す活動の表れとご理解を頂きたい」と語っていた。

 新型高級セダン・ハイブリッド車「レジェンド」は、衝突や車線逸脱を防ぐためのレーダーやカメラを使った安全運転支援システムを搭載している。この品質確認を徹底するためだという。レーダーとカメラで道路脇の歩行者を検知し、衝突するおそれがある場合は自動でハンドルが動いて回避する安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ・センシング)」を搭載するなど、先進技術が惜しみなく詰め込まれている。

 発売日を延期する理由は、「総合的な品質の検証、熟成に時間をかけている」という。つまり延期の理由は前回と同じ。日本の自動車メーカーが、発売日を2度も変更するのは異例だ。ホンダに何が起きているのだろう?

 自動車メーカーに限らず、製造業者が品質について慎重を期すのは当然だ。2013年9月に発売した3代目の「フィット」では、発売後の短期間でリコールが相次ぎ、一時は生産車両の出荷を見合わせ、販売したクルマの納車も中止した。フィットで5度目のリコールとなった今年10月には、伊東孝紳社長はじめとした役員12人が役員報酬を返納すると発表したほど深刻な問題となった。

 そのため、品質保証体制の強化を内外に打ち出す目的で、新たに品質改革部門を設立、四輪事業本部長の福尾幸一専務執行役が設置された品質改革担当部門の役員に就き、本田技術研究所の副社長も兼務することとなった。福尾氏は社内で「ミスタークオリティ」とも呼ばれる人物だという。

 今回、発売が延期された最上位車種であるレジェンドは、販売価格が680万円と高価なため、月間の販売目標も300台と大きくない。が、12月にリリースした小型ハイブリッドセダン「グレイス」を皮切りに「N-BOX SLASH」を含めて2015年3月まで合計6車種を国内で投入する。

 数量は少ないとはいえ、最上級ハイブリッド車「レジェンド」の最新システムは、今後のスポーツカー、NSXにつながるメカニズムが詰まっている。発売再延期で無事に2月20日の発売を迎えられるのだろうか。

 一方、12月22日にスズキが軽自動車アルトを「原点回帰」をコンセプトに発表した。そのスズキ・アルトは、ハイブリッド車並みの燃費性能を備え価格は70万円(商用車含む)弱からと割安にした。ある意味ベーシックなクルマの価値を重視した新型である。

 しかしその日、ホンダは“N”シリーズの5作目ホンダの「N-BOX SLASH(エヌボックス・スラッシュ)」を発表。このモデルは若者向けなどに内外装が異なる5種類のデザインを用意、車内では高音質の音楽が楽しめる。2015年4月の軽自動車増税を控え需要を喚起するモデルだという。N-BOX SLASHは、従来に比べ天井を100mm低くし2ドアのクーペのような外観に仕上げたモデル。オーディオにもこだわった。重低音を再生する「サブウーファー」を含めた9基のスピーカーを搭載。価格は138万円~193万9400円。月2500台の販売を目指す。

 N-BOXはハイト系ワゴンのなかで大ヒット作となったモデルだ。N-BOX SLASHはその派生モデルだが、自動車としての機能よりも、オーディオや車内のシートなどに訴求ポイントが集中。スズキ・ハスラーの二番煎じを狙ったモデルのようだが、高さに余裕があったモデルの室内空間をわざわざ犠牲にしてまで天井高を下げた“若者向け”軽自動車だという「安直さ加減」にうんざりしているのは筆者だけだろうか?

 レジェンドの発売延期、タカタ製エアバッグのリコール問題も逆風となっているホンダにとって気の抜けない日々が続く……と、思われる。(編集担当:吉田恒)

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