NASA、民間有人宇宙船の開発にボーイング社とスペースX社を選定

2014年9月17日 15:09

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記事提供元:sorae.jp

NASA、民間有人宇宙船の開発にボーイング社とスペースX社を選定(Image credit: Boeing/SpaceX)

NASA、民間有人宇宙船の開発にボーイング社とスペースX社を選定(Image credit: Boeing/SpaceX)[写真拡大]

 米航空宇宙局(NASA)は2014年9月16日(日本時間17日)、国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士の輸送に使用する宇宙船の開発企業に、ボーイング社とスペースX社の2社を選んだと発表した。早ければ、2017年にも有人飛行が実施される予定だ。

 NASAではかねてより、ISSへの物資や宇宙飛行士の輸送を、NASAのロケットや宇宙船を使うのではなく、民間企業に委託しようという構想を持っていた。その後、2006年に「商業軌道輸送サービシズ(COTS、Commercial Orbital Transportation Services)」と名付けられたプログラムが立ち上げられ、構想を実現に移す動きが始まった。

 これまで、すでに無人の補給船については計画は達成されており、スペースX社がファルコン9ロケットとドラゴン補給船を、オービタル・サイエンシズ社がアンタレス・ロケットとシグナス補給船の開発に成功している。また、両社は実際にISSへ貨物を輸送する契約(CRS、Commercial Resupply Services)をNASAとの間で結んでおり、その契約の下で、現在も定期的に輸送船が打ち上げられている。

 一方COTSでは、貨物輸送とは別に、有人宇宙船と、それを打ち上げるロケットの開発プログラムである商業有人宇宙船開発(CCDev、Commercial Crew Development)も平行して進められている。これまでに2つのラウンドを経て、ボーイング社とスペースX社、シエラ・ネヴァダ社の3社が残り、第3ラウンドにあたるCCiCAP(Commercial Crew integrated Capability)と呼ばれるプログラムの下で、それぞれ宇宙船の開発を進めていた。

 今回、NASAが発表したのは、そのCCDevの第3ラウンド目のCCiCAPの勝者であり、第4ラウンド目のCCtCAP(Commercial Crew Transportation Capability)プログラムへの参加資格を得た企業だ。ボーイング社とスペースX社は、NASAからのさらなる資金提供を受けつつ、実際にISSへ向けて打ち上げられる、有人宇宙船とロケットの開発をさらに進めることになる。なお、敗れたシエラ・ネヴァダ社からは、現在のところコメントは出ておらず、これまで開発を進めていた宇宙船ドリーム・チェイサーを、今後どうするのかは不明だ。

 ボーイング社が開発しているのはCST-100と呼ばれるカプセル型の宇宙船で、打ち上げはロッキード・マーティン社が開発したアトラスVロケットを使用する予定だ。スペースX社が開発しているドラゴンV2もやはりカプセル型の宇宙船で、こちらは自社開発したファルコン9ロケットを使い打ち上げられる。

 契約額は総額68億ドル(約7,300億円)で、そのうちボーイング社に42億ドル、スペースX社には26億ドルが与えられる。また契約には、自社による最低1回の有人宇宙飛行を実施することが定められており、宇宙船とロケットの打ち上げから軌道変更、ISSへのドッキング、地球への帰還といった一連の流れを実施し、NASAに機能や性能、安全性などを証明しなければならない。またmこの打ち上げには、最低1人のNASA宇宙飛行士を乗せることも条件として付け加えられている。

 どちらが先に打ち上げられるかはまだ分からないが、初打ち上げは2017年とされている。

 この自社試験が完了し、NASAによる評価も完了すれば、いよいよ本番となる有人宇宙飛行が実施されることになる。ミッション回数は最低2回から最大6回ほどとされる。

 スペースシャトルの引退後、NASAは宇宙飛行士の輸送をロシアのソユーズ宇宙船に任せてきたが、これらの宇宙船が開発されれば、その依存から脱却できることになる。何より、米国の地から、米国の有人ロケットの打ち上げが再開されることにもなる。

 今回の発表に際して、NASAのチャールズ・ボウルデン長官は以下のように述べた。

「オバマ政権はかねてより、この世界でもっとも偉大な国家である我ら米国が、宇宙への輸送手段を他国に頼るべきではないことを明確に打ち出していました。オバマ大統領のリーダーシップと、NASAや産業界の大変な働き、そして議会からの支援により、今日私たちは、2017年までに米国の宇宙飛行士を乗せた米国の宇宙船を、米国の大地から打ち上げ、ロシアへの有人輸送の依存を終了させるべく、ひとつのステップを踏み出しました。また、地球低軌道への物資や宇宙飛行士の輸送を民間に担わせることにより、我々NASAは、火星への有人飛行という大きな目標に向け、より集中することが可能になります」。

■NASA Chooses American Companies to Transport U.S. Astronauts to International Space Station | NASA
http://www.nasa.gov/press/2014/september/nasa-chooses-american-companies-to-transport-us-astronauts-to-international/index.html#.VBisgBbSltY

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