日本エンタープライズ:12年5月期業績は増収増益で着地

2012年7月19日 10:12

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■ATIS社の売上高が第3四半期より加わり17.7%の増収

  モバイルソリューションの日本エンタープライズ <4829> (東2)は12日、12年5月期決算説明会を開催した。

  売上高27億90百万円(前年同期比17.7%増)、営業利益3億4百万円(同14.0%増)、経常利益3億18百万円(同12.4%増)、純利益1億70百万円(同0.7%増)と増収増益で着地した。

  前期の第4四半期のハイライトは、コンテンツサービス事業においては、スマートフォン対応を積極的に進め、今年の3月にKDDIが大々的にスタートさせたauスマートパスにスタートから参画した。グループ全体で3コンテンツのサービス適用を行っている。また、スマートフォン向けの月額課金サイトの会員獲得を増進した。更に、無料アプリの利用者拡大を推進した。

  ソリューション事業に関しては、6月1日に開示しているように日本一のポイントプログラムであるPontaポイントが利用可能な「Ponta App Market」を創設し、プラットフォーム運営に参入した。また、企業向けのスマートフォン用アプリ・サイト制作の需要が顕在化したことで、営業提案の強化を実施した。更に、店頭アフィリエイトの展開、来店顧客の囲い込み施策支援の強化等を実施し、携帯電話販売代理店との協業を強化した。

  海外事業については、中国では、新規事業としてチャイナテレコム(中国電信)との業務提携を行った。また、電子コミック配信事業を推進する一方で、チャイナユニコム向けにAndroidアプリの提供を行っている。

  インドについては、MAGNA社との業務提携による書籍コンテンツのAndroid向け対応を行った。

  以上のような取り組みを行った結果、前期において、売上高は17.7%増と順調に伸びた。四半期別の売上高の推移は、第1四半期6億31百万円、第2四半期6億12百万円、第3四半期7億16百万円、第4四半期8億30百万円と第3四半期、第4四半期の売上が大きく伸びている。主な要因は、第3四半期から子会社となったATIS社の売上高1億68百万円(第3四半期)、1億83百万円(第4四半期)が加わったことによる。

■コンテンツサービス事業、ソリューション事業共に増収

  コンテンツサービス事業の売上高は、15億33百万円(同30.0%増)と大幅に伸びた。内訳は、海外68百万円(同57.3%増)、その他2億35百万円(同113.3%増)、交通情報2億91百万円(新規事業)、ゲーム45百万円(同30.9%減)、メール・カスタム4億17百万円(同2.9%減)、音楽4億75百万円(同10.3%減)となっている。

  その他が113.3%増と大きく伸びているが、その要因は、電子書籍、健康サイトが大幅増収となったことによる。交通情報の売上高は、ATIS社の売上によるもの。

  ソリューション事業の売上高は、12億57百万円(同5.6%増)。内訳は、海外22百万円(同37.1%減)、広告3億60百万円(同9.0%増)、物販61百万円(同59.3%増)、MSP97百万円(同7.2%増)、ソリューションコンテンツ2億66百万円(同7.1%増)、ソリューション4億48百万円(同0.7%増)であった。ソリューションコンテンツには、ATIS社の売上が含まれている。

  一方、四半期別の販管費は、第1四半期2億90百万円、第2四半期2億73百万円、第3四半期3億54百万円、第4四半期3億44百万円とATISの販管費が第3四半期より加わったことで、第3四半期、第4四半期の販管費は増加している。

  しかし、販管費率は、第1四半期46.0%、第2四半期44.6%、第3四半期49.4%、第4四半期41.5%と第3四半期は高くなったものの、第4四半期は最も低くなっている。

  セグメント別の利益は、コンテンツサービス事業4億94百万円(同22.9%増)、ソリューション事業3億17百万円(同9.4%減)であった。

  コンテンツサービス事業は販管費が増加したものの、増収で販管費を吸収した。一方のソリューション事業は、売上構成の変化に伴い原価率が上昇したことで、減益となった。

■自己資本比率は85.7%と健全そのもの

  貸借対照表の資産合計は、35億77百万円(同3億37百万円増)。内訳は、流動資産25億6百万円(同3億8百万円減)、固定資産10億70百万円(同6億46百万円増)となっている。

  流動資産の減少要因は、ATIS社の株式追加取得により、現金及び、預金が減少したことによる。固定資産の増加要因は、ATIS社ののれん、ソフトウェア及び長期預金の増加による。

  負債の合計は、3億96百万円(同68百万円増)。内訳は、流動負債3億61百万円(同40百万円増)、固定負債35百万円(同27百万円増)。

  流動負債の増加要因は、買掛金及び前受け金の増加による。固定負債の増加要因は、繰延税金負債等の増加による。

  純資産合計は、31億80百万円(同2億69百万円増)。その結果、自己資本比率は、85.7%と健全そのもの。

  前期は、ATIS社を子会社化したことから、第3四半期以降の売上が拡大したこともあり、増収増益となった。

  今期も、ATIS社の業績が通期で寄与することもあり、13年5月期連結業績予想は、売上高35億90百万円(前期比28.6%増)、営業利益3億25百万円(同6.8%増)、経常利益3億35百万円(同5.3%増)、純利益2億円(同17.6%増)と増収増益を見込んでいる。

■国内事業ではスマートフォン増加に伴い、店頭アフィリエイト拡大を目指す

  今期業績予想を達成するための施策として、国内事業、海外事業についていの説明が行われた。

  国内事業のコンテンツサービス事業では、スマートフォン対応により、コンテンツ、端末、プラットフォーム、決済の4分野で領域の拡大と拡張を推進する。

  一例として挙げると、先述しているように、今年の3月からスタートした「auスマートパス」には、既に、「女性のリズム手帳」、交通情報サービス、デコメールの3コンテンツを提供している。今後は、携帯通信キャリアの施策にあわせたタッチポイントの拡大を図っていく。

  ソリューション事業のソリューションに関しては、コンテンツ制作支援、業務支援、開発力強化の3点を挙げている。

  コンテンツ制作支援では、アプリ、サイトの制作の支援を行う。業務支援では、業務システム、店舗運営に関しての支援を行ってゆく。開発力強化に関しては、前期に子会社化した「フォー・クオリア」と開発・運営機能の強化・統合を行い、グループ全体の開発の効率化を図る。

  ソリューションコンテンツに関しては、コンテンツ運営支援、交通情報サービス、プラットフォーム運営の3点を挙げている。

  中でも今夏に開始する「Ponta App Market」が注目される。「Ponta App Market」は、ロイヤリティ マーケティングと共同で、共通ポイントプログラム「Ponta」のPontaポイントで決済することが出来るAndroid向けコンテンツマーケット。同社は、その「Ponta App Market」にアプリを提供することで、手数料を得る仕組みになっている。

  ソリューション事業の広告に関しては、スマートフォンの増加に伴い、店頭アフィリエイトの拡大を目指す。そのために、協業先(店舗)の拡大、商材の仕入力向上、利益率の向上、獲得率の向上を計画している。

  売上が順調に伸びている店頭アフィリエイトのビジネスモデルは、コンテンツプロバイダーから広告費が日本エンタープライズに支払われ、日本エンタープライズは携帯電話代理店にコンテンツを来店客に販売してもらうことで、販売手数料を支払うシステムとなっている。

  これまでの店頭アフィリエイトの獲得件数の実績を見ると、フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行していることが歴然としているため、今期もスマートフォンに注力する。

■新規事業として、9月より中国電信の携帯ショップを出店

  海外事業に関しては、中国では、携帯電話契約数が順調に伸びて、12年5月現在で約10億4,000万件となっている。そのうち、3Gは1億7,000万件。日本の契約数が1億3,000万件であることから、約8倍の市場規模といえる。

  その様な状況の中で、同社は、電子コミックを中心にコンテンツサービス事業で売上の拡大を目指している。コミックの取扱量を拡大するために、中国軽工業出版社、漫画家新媒体連盟を通じたコミックコンテンツ流通の活性化を図っている。また、配信先を拡大するために、コミックストア「漫魚」等をオープンし、ユーザー数の拡大を目指している。一方、ツール・ゲーム等は、携帯事業者(キャリア)のマーケットへの配信を強化している。

  また、新規事業として、9月より中国電信(チャイナテレコム)の携帯ショップを出店することが決定している。日本式おもてなし、販売ノウハウを提供し、顧客満足度を向上し、将来的には携帯電話の販売だけでなく、コンテンツ販売も拡大するために、携帯通信事業者との協業により、日本で成功している店頭アフィリエイトを展開していく方針。

  更に、チャイナテレコムショップの大型旗艦店 東方路店の店舗運営も受注した。店舗面積は約600平方メートルで、取扱商品は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、固定電話等である。8月にリニューアルオープンを予定している。今期の業績予想には、この店舗の売上を計上していないことから、業績への貢献も期待できる。

  インドに関しては、大手出版社MAGNA社(本社:インド ムンバイ)と、電子書籍の独占配信に関する業務提携し、iPad向け電子書籍アプリ「iSTARDUST」の提供を開始している。また、ほかの雑誌社も開拓し、将来的には独自の電子雑誌のプラットフォーム事業を計画している。

■代表取締役社長植田勝典氏 同社の特徴について語る

  今期の事業施策の説明後、代表取締役社長植田勝典氏は、前期のトピックスと同社の特徴について、次のように語った。

  「当社の特徴としては、アプリの版権を自社で保有しているので、他社と比較すると利益率は高いといえる。更に、店頭アフィリエイトの自社活用により、他社と比較して効率的な広告宣伝を行っているといえる。

  また、これまでの努力により、通信事業者との関係も密になっている。例えばKDDIのauスマートパスについても当初から参画している。海外(中国)では、8月にオープン予定の店舗運営委託の件は、元々チャイナテレコムが行ってきたが、当社グループの総合力を評価いただいた結果、中国内資企業との競合の末、当社子会社が受託した。

  更に、ATISの件では、トヨタ自動車は当社の株主であるので、トヨタ自動車との事業連携も当然視野に入れて買収をした。そういった案件も今後出てくるのではと考えている。

  今期の業績については、3期連続の増収増益を目指し、配当については、今期は20円増配の150円を予定している」と語った。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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