NASA、ハッブル宇宙望遠鏡の延命案を募集―2032年までの整備を想定

NASA has provided an update on the status of the Hubble Space Telescope following a series of tests. (NASA)[写真拡大]
米航空宇宙局(NASA)は2026年10月29日、ハッブル宇宙望遠鏡の軌道引き上げや整備に関する情報提供依頼(RFI)を発行した。現在も観測を続ける望遠鏡の科学的な活動期間を延ばすため、民間の技術や実施可能性を調べる段階で、ミッションの実施や担当企業は決まっていない。
■軌道引き上げと能力向上の可能性を調査
NASAが求めているのは、ハッブルをより高い軌道へ移す方法や、整備によって観測能力を高める方法についての情報だ。回答期限は米東部標準時の2026年11月30日午後3時、日本時間では12月1日午前5時となっている。
ハッブルが周回する低地球軌道にも希薄な大気があり、宇宙機はその抵抗を受ける。大気抵抗によって軌道を維持するためのエネルギーが失われ、時間とともに高度が下がっていく。
NASAの2026年10月時点の分析では、ハッブルは2033〜2034年ごろに大気圏へ再突入する可能性が高い。自力で軌道を維持する推進系を備えていないため、NASAは対応するミッションを2032年までに実施する必要があると見込んでいる。
別の宇宙機によって軌道を引き上げられれば、ハッブルが宇宙にとどまれる期間を延ばし、観測を続ける機会を確保できる。今回の募集では、運用終了時の安全な制御再突入や軌道上での処分も検討対象としている。
■5回の整備が支えてきた長期運用
ハッブルはNASAと欧州宇宙機関(ESA)の国際協力による望遠鏡で、1990年4月に打ち上げられた。宇宙飛行士が軌道上で修理や機器交換を行えるように設計されていた。
スペースシャトルによる整備は計5回行われ、最後は2009年だった。宇宙飛行士による部品交換や観測機器の更新が、当初想定された運用期間を超える活動を支えてきた。
スペースシャトルは2011年に運用を終えており、新たな整備には別の輸送・作業手段が必要になる。NASAは今回のRFIを通じて、民間企業による宇宙機の捕獲や軌道上整備の技術を、ハッブルに活用できるか調べる。
■2万3000本以上の論文と高い観測需要
ハッブルは銀河、恒星、惑星など幅広い天体の研究を支えてきた。地上の望遠鏡とともに宇宙の加速膨張を示す観測にも貢献しており、この発見は2011年のノーベル物理学賞の対象となった。
NASAが2026年6月更新の資料で示した実績では、ハッブルのデータを使った査読付き科学論文は2万3000本以上に上る。長年蓄積された観測データも研究資源となっている。
観測時間への需要も高い。NASAは2026年9月、天文学者が希望するハッブルの観測時間は、年間に提供できる時間の約7倍に達すると発表した。
ハッブルが得意とする紫外線・可視光の観測は、赤外線を中心に観測するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡と補完関係にある。異なる波長のデータを組み合わせることで、天体の姿を多面的に調べられる。
科学研究に加え、わし星雲の「創造の柱」をはじめとする画像は、宇宙への関心を広げてきた。NASAはハッブルの文化的な影響について、何百万人もの人々に刺激を与え、宇宙探査への関心を育んだと説明している。
■2022年にもSpaceXと実現可能性を研究
ハッブルの軌道引き上げは、以前にも検討されている。NASAは2022年9月、SpaceXとポラリス計画が提案した構想について、ドラゴン宇宙船を使った軌道引き上げの実現可能性を研究する協定をSpaceXと結んだ。
ポラリス計画を率いていた起業家のジャレッド・アイザックマン氏は、2021年9月と2024年9月に実施されたSpaceXの有人地球周回飛行に資金を提供し、自ら指揮した。2022年のハッブル構想は、このうち2回目の飛行より前に提案されたものだ。
AP通信によると、NASAは2024年6月の時点で、期待される利益よりリスクが大きく、さらに分析が必要だとして、軌道引き上げミッションの実施を見送っていた。
2025年12月にNASA長官に就任したアイザックマン氏は、2026年10月30日のNASA発表で、ハッブルの科学的成果をできるだけ長く維持するため、革新的で費用対効果の高い延命方法を検討する意義を強調した。AP通信が同年9月に報じた発言でも、価値ある宇宙機を代替機の打ち上げより低い費用で延命できるなら、維持する意味があるとの考えを示していた。
■商用整備の先行例となったスウィフト
NASAは別の宇宙望遠鏡でも、民間企業による軌道引き上げを試みた。2025年9月、ニール・ゲーレルス・スウィフト天文台の延命に向け、Katalyst Space Technologiesに3000万ドル(約47億4000万円)の契約を授与した。太陽活動に伴う上層大気の膨張で大気抵抗が増し、軌道高度の低下が加速していた。
同社の宇宙機「LINK」は2026年7月3日に打ち上げられたが、姿勢制御の問題が発生した。NASAと同社は8月19日、スウィフトの捕獲と軌道引き上げを実施しないと発表した。同社によると、その後も接近観測などを行い、将来の軌道上整備に向けたデータを収集した。
AP通信によると、スウィフトは2026年11月4日に大気圏へ再突入した。2004年の打ち上げから約22年が経過しており、当初予定された2年間の主要ミッションを大きく超えて活動した。
ハッブルについてNASAが探っているのは、現在も高い観測需要を持つ研究基盤を、民間の技術でどこまで維持・強化できるかという点だ。今回集める情報は、延命と運用終了時の処分の双方を検討する材料となる。
元記事: NASA Considers Hubble Space Telescope Rescue Mission as 2033 Reentry Approaches
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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